2021 Fiscal Year Annual Research Report
連接層の導来圏における変形とBridgelandの安定性条件
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21J20895
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾関 諒介 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 球面随伴 / ホモトピー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の2点について研究を行った. (1)正標数体上の代数多様体に由来する球面随伴の構成に向けた研究.三角圏に対して定義されるBridgelandの安定性条件の空間と,球面随伴と呼ばれる三角圏の間のある種の随伴との間には密接な関係があることが先行研究などで知られていることもあり,今年度は球面随伴の研究に注力した.現在までに知られている球面随伴の例はカラビ・ヤウ多様体や箙の表現に由来するものがほとんどで数論的対象に由来する例はまだ知られていない.今年度,ある条件下でフロベニウス写像に由来するl進層の導来圏上の自己関手を導入し,それが球面随伴を構成する関手と類似する性質を持つことを示した. (2)特性多項式の一般化対象に関する研究.線形代数などで馴染みのある特性多項式は近年発展の著しいホモトピー論においてTRトレースと呼ばれる巡回K理論から位相的制限ホモロジーへのスペクトラムの間の射として一般化されている.位相的制限ホモロジーの素数pに関する分解因子は,その0次ホモトピー群が(p典型)Witt環と呼ばれる数論的な対象に一致するなど数論的に重要な意味を持つが,このスペクトラムは球面随伴と似た性質を有している.今年度のはじめは値域をこの分解因子として持つようなTRトレースの分解を構成することを目指した.この構成に向けて今年度はいくつかの基礎道具を導入した.例えば,円周圏の素数pに関する部分圏を導入し,射の一意的な分解など通常の円周圏と類似の性質をこの部分圏が持つことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Bridgelandの安定性条件と球面随伴との関係性を調べるにあたって球面随伴の圏論的な構造を調べる必要が生じ,その研究を進める中で生じた数論的な問題に取り組むこととなり,当初の研究の方向性からは少々逸れてしまった.しかし素数pに関する部分圏などの構成及びその性質の証明など当初とは別の方向性で結果を出すことができたから.
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Strategy for Future Research Activity |
現状得られた構成や結果は一定の整合性をもつものの,TRトレースの分解の構成に際していくつかの技術的な問題を抱えている.今後はこの技術的な問題の解決を試みるとともに当初の方向性に関しても考察を深めていく.
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