2022 Fiscal Year Annual Research Report
MnTe多形変態のひずみ制御およびそのストレイントロニクスデバイスへの展開
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21J21551
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
KIM MIHYEON 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | Manganese Telluride / Cr-Mn-Te / 薄膜 / 多形変態 / 不揮発性相変化メモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
MnTeは室温安定相のα相、高温相のβ相をもつ多形体であり、これら結晶間の多形変態に伴い、電気抵抗や光学バンドギャップの大きい変化を示す相変化材料である。我々研究グループは、コスパッタリング法により成膜したMnTe薄膜の多形変態を用いることで高速かつ省エネな不揮発性メモリ動作が可能であることを見出した。一方で、MnTeを含むこれまでの相変化メモリ(PCRAM)では、ジュール熱により単に0と1の二値を操るメモリであったが、膨大に増え続けるデータ量やAI技術の発展により、より高性能・高機能なメモリの開発が期待されており、スピントロニクスやストレイントロニクスといった新分野の研究が世界中で活発になっている。本研究では、多段階的に抵抗値を変化できれば多値記録メモリによる大容量化が可能となる。 本研究では、MnTeの多形変態に熱応力が密接に関係していることから、外部応力による多段階的な物性変化の可能性に注目した。しかし、MnTe薄膜の変態温度は450℃以上と高温であり、応力による物性変化を実現するには変態温度の低下が求められる。そこで、成膜したままの薄膜の相安定性に注目し、第三元素(Cr)を添加することで相安定性を制御した結果、多形変態温度を低下させることに成功した。さらに、特定組成領域におけるCr-Mn-Te三元系薄膜は二元系MnTe薄膜より多段階的な電気抵抗の温度依存性を示すことがわかった。この段階的な変化は当初目的であった多値記録への可能性が示唆される。現在、Cr-Mn-Teデバイスを作製してメモリ動作を評価し、不揮発性メモリ動作を示すことを実証しており、続いてジュール熱や、ひずみ制御による多値記録の可能性を試みる方針である。また、これらの結果は国内学会や国際会議にて成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の結果に続き、MnTeに第三元素Crを添加し、Cr-Mn-Te三元系薄膜の相変態挙動を調査した結果、特定組成領域におけるCr-Mn-Te三元系薄膜は二元系MnTe薄膜では得られない、より複雑な電気抵抗の温度依存性を示すことがわかった。また、Cr-Mn-Te三元系薄膜の場合、成膜ままの状態から400℃まで同じ結晶構造を維持しているにもかかわらず、電気抵抗は2~3桁程度低くなり、p型半導体からn型半導体に変化する。しかし、二元系MnTe薄膜で観測できないこの特性のメカニズムがまだ明らかになっていない。現在まではSpring-8でのHAXPES測定を行い、熱処理温度によるそれぞれの結合状態を調べることでCrの価数変化の可能性に注目している。
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Strategy for Future Research Activity |
Cr-Mn-Te三元系薄膜におけるp型-n型の変化や、電気抵抗変化のメカニズムがまだ明らかになっていない。そのため、TEMによる結晶構造の変化を観測し、前年度のHAXPESの結果に続いて、XAFS測定などを行い熱処理温度による配数の変化やCrの価数変化を調べる方針である。 また、Cr-Mn-Teの場合は多段階な電気抵抗の温度依存性を示すことがら、多値記録の可能性が示唆されるが、まだデバイスとして実証されていない。様々なデバイスの構造を工夫し、ジュール熱やひずみによる電気抵抗制御に挑戦し、得られた成果を国際会議にて発表し、学術論文としてまとめる。
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