2022 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪酸組成に基づく易分解性有機物の酸素消費能評価と内湾の貧酸素化低減方策の立案
Project/Area Number |
21J21815
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
畠山 勇二 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 貧酸素水塊 / 沿岸域 / 粒状有機物 / 脂肪酸組成分析 / 無給餌養殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、沿岸域底層での貧酸素水塊形成に寄与する、粒状有機物に着目している。粒状有機物の沈降・分解過程での質的変化の解明による溶存酸素消費量推定の高精度化および局所的な有機物負荷が生じる養殖場における有機物動態(付着生物除去)による粒状有機物負荷削減効果の推定を目的に研究を遂行している。2022年度は、無給餌養殖(カキ養殖)における付着性二枚貝の発生による、カキ成育や底層への有機物負荷への影響を評価する目的のもと、カキ個体に対し、付着生物の主要種であるムラサキイガイを恣意的し付着させ、その付着量を操作した飼育・給餌実験を実施した。その結果として、カキ1個体へのイガイ付着量の増加に伴い、カキ軟体部の乾燥重量が有意に低下しや消化管中のDHA/EPAの脂肪酸比が有意に増加した。これらから、海域でのEPA生産の担い手であり、二枚貝の成育に重要な珪藻の摂餌量が、イガイの付着量の増加に伴い相対的に減少し、カキの成育鈍化につながる可能性が示された。また種間差として、イガイはカキよりもEPAの摂餌速度が大きく、イガイの付着がカキとの珪藻をめぐる競争を激化させる可能性が示された。さらに粒状有機炭素(POC)排泄速度もイガイの方がカキよりも大きく、カキ養殖場でのイガイの付着が養殖場下への有機物負荷を増大させる可能性が示された。これらから、無給餌養殖における付着生物除去は養殖種の成育を促進しつつ同時に底層への環境負荷を削減しうる手法であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験計画にならい研究を遂行した点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験によって個体レベルで得られた養殖カキに対する付着イガイの影響を養殖場スケールで一般化させ、カキ生産量や有機物沈降量、海域POC濃度等が付着生物除去の有無によってどの程度変化するかのシミュレーションを実施する。また、本実験によって得られた結果から国内誌一編、国外誌一編を執筆する。
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