2021 Fiscal Year Annual Research Report
生命誕生前の地球を模擬した新たなRNAモノマー生成過程の検証
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21J22596
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平川 祐太 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 生命起源 / RNA / ヌクレオチド / 化学進化 / リボース / 核酸塩基 / リン酸 / ホウ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期地球環境に妥当な条件下におけるRNAモノマー(ヌクレオチド)の生成を目的とした室内実験を行なった。本年度は、ヌクレオチドの一部であるヌクレオシドの生成に取り組んだ。生成反応として、初期地球で一般的な反応であったと考えられるホルモース型反応に着目し、ホルモース型反応実験を行うとともに、実験生成物の分析手法の開発にも取り組んだ。実験の結果、現在の生命が用いるヌクレオシドの生成は確認されなかった一方で、ヌクレオシドと構造がよく似た複数の分子の生成が確認された。この結果は、初期地球において現在の生命が用いるヌクレオシド以外にも多くのヌクレオシド類似物が存在しており、化学進化の過程で、現在の生命が用いる物質に収束していったということを示唆している。また、従来の初期地球におけるヌクレオシドの生成に関する研究は、多段化の複雑な操作を必要とする反応であったのに対し、本研究は、一段階の単純な反応であり、初期地球環境で起こった反応としては、より妥当と考えられることも重要な点である。生成物の分析は、液体クロマトグラフィー質量分析計および、ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて行なった。生成物の正確な同定のため、標準試料の合成を有機化学的手法を用いることで行なった。さらに、当時の地球に存在していたと考えられるイオンの効果を検証し、ホウ酸イオンがホルモース型反応によるヌクレオシド類似物の生成に有利に働くということを発見した。この結果は、初期地球のホウ酸が豊富に存在する環境が、ヌクレオシドやRNAの生成に有利に働いたという説を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、アルデヒドとアンモニアを用いた実験において、ヌクレオシドの類似物と考えられる分子が生成することを明らかにした。さらに、ヌクレオシド類似物の生成量がホウ酸イオンの有無によって大きく変化するという結果も得られた。ヌクレオシド類似物の分析に際し、標準試料を有機化学的手法を用いて合成し、生成物の同定に使用した。また、分析手法の開発にも取り組み、高速液体クロマトグラフィー質量分析において、最適な分析条件を発見した。反応経路の推定や、現在の生命が用いるヌクレオシドの生成には至らなかったが、本年度に得られた結果は、概ね当初の研究計画の通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
アルデヒドとアンモニアからのヌクレオシド類似物の生成の反応経路を特定するため、同様の条件によって生成する核酸塩基類似物の生成量を明らかにし、生成種の同定も行う。さらに、ヌクレオシド類似物の前駆体物質の同定を目指す。 現在の生命が用いるヌクレオシドの生成に対し、これまでの研究で生成したヌクレオシド類似物が果たした役割を見出すため、ヌクレオシド類似物と複数種の有機分子を出発物質として用いた実験を行う。 さらに、ヌクレオシド類似物のリン酸化実験を行い、ヌクレオチド類似物を生成することを目指す。ヌクレオチド類似物の標準試料を有機化学的手法を用いて合成し、実験生成物の定性・定量を行う。生成物の高速液体クロマトグラフィー質量分析において、最適な分析条件の作成を目指す。
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