2022 Fiscal Year Annual Research Report
キラルブレンステッド酸触媒による励起カチオン種発生に基づく不斉ラジカル反応の開発
Project/Area Number |
21J23000
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
相澤 佑季 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 有機分子触媒 / 不斉合成 / ブレンステッド酸 / 光反応 / ラジカル反応 / 励起カチオン種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、温和でメタルフリーな反応条件下、安価で豊富な化学原料から高付加価値な化合物を構築する環境調和型な分子変換法の確立を目指し、従来困難であったキラルブレンステッド酸触媒による非極性官能基の不斉変換を可能とする新たな触媒反応系の開発を目的としている。励起状態にある化合物は酸化・還元の特性を示し、基底状態では進行することが困難な変換を可能とする。特にカチオン種は、その高い電子受容性から、励起状態において高い酸化力を有することが想定される。また励起カチオン種への一電子移動によって生じるラジカルカチオン種は隣接位のsp3炭素-水素結合の酸性度が非常に高くなるため、酸触媒の共役塩基によって引き抜くことができると考えられる。そこでキラルブレンステッド酸触媒の作用によって生じる有機カチオン中間体を光励起することで一電子酸化剤として機能させた。またキラルブレンステッド酸触媒が構築する不斉反応場のもと立体選択的に反応が進行すれば、豊富な化学原料から高付加価値な光学活性化合物へと変換できる強力な手法になると期待し検討を進めている。 検討の結果、キラルリン酸触媒の作用によってヘミアミナールから容易に発生するイミニウム中間体を可視光照射下、ドナー分子として入手容易な単純オレフィンを用いることで、高いエナンチオ選択性で目的生成物が得られることを見出し、これまで変換困難だった単純オレフィンの適用をさらに拡充することに成功した。また本反応系において、溶媒効果が従来のイオン反応とは異なる傾向を示しており、立体制御機構解明に向け、新たな知見を提供することができた。 上記に併せ、求電子剤およびドナー分子の拡充を目指し、新たなプロセスの開拓を行い、目的の反応が進行することを見出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、ブレンステッド酸の作用によって生じるカチオン中間体を光照射下、一電子酸化剤として機能させた不斉ラジカル反応は目的の反応が進行し不斉の発現に成功している。また、溶媒効果が従来とは異なる傾向を示すことを見出し、キラルリン酸を用いた不斉ラジカル反応の立体制御機構解明への大きな知見を得ることができた。その一方で、適用範囲の拡充を目的とした、ブレンステッド酸を用いた新たな触媒反応系を見出すことができたのは大きな進展であるといえる。このように現在までに得られた知見から、今後のさらなる展開が期待できることから、「研究の進捗状況」として「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
比較的安定な有機カチオンとしてイミニウム種が本不斉光反応系において有効であることが明らかとなった。しかし、収率に課題が残る結果となっているため、本反応系をフロー系に適応させることで収率の改善を目指す。また、本反応系における溶媒効果は、従来とは異なる傾向を示すことが分かった。その知見を活かし、電気化学的手法および理論計算を用いることで反応機構の解析を行い、収率およびエナンチオ選択性改善に向けてのさらなる知見を深める。 上記に併せ求電子剤およびドナー分子の拡充を目指した新たなプロセスに基づく反応開発において、不斉反応へと展開する。。そして、これらの方法論を確立することで、有機合成に新たなアプローチを提供することを目指す。
|