2022 Fiscal Year Annual Research Report
高統計ラムダ陽子散乱実験を用いたバリオン間相互作用の起源の研究
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21J23137
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梶川 俊介 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | YN相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、先行研究の1000倍以上の統計数でΛp散乱実験を行い、運動量400MeV/c以上の領域でΛN二体相互作用の性質を明らかにすることを目的としている。この高統計散乱実験はJ-PARC 高運動量ビームライン(high-pビームライン)で実施することが計画されており、その実行に向けてhigh-pビームラインの2次粒子ビームモードで用いるための実験システム・解析手法の開発が進められている。 2022年度は、前年度に引き続きファイバー検出器読み出し用回路であるCIRASAME基板用のファームウェア開発を行い、MPPCバイアス電源制御用モジュール等を作成した。その後、実際のMPPCを用いた信号の確認と、MPPC読み出し用ASICであるCITIROC内のディスクリミネータの動作確認を行った。この確認の完了後、後述するEMPHATIC実験のデータ解析に注力するため、CIRASAME基板用ファームウェア開発の引継ぎを行った。 また、昨年度に引き続き、アメリカ・フェルミ研究所で行われるEMPHATIC実験への参加を行い、高運動量中間子ビームを用いたハドロン生成の測定を行った。本年度は2022年6月のPhase-1b、2023年3月のPhae-1cの2回のrunに参加した。これらのrunにおいて、ポリエチレン標的と4 - 20 GeV/cのπ中間子ビームを用いたハドロン生成反応の測定を行い、trigger数で22M countの有効なhigh-pビームライン用のデータを収集した。本データは、high-pビームラインにおけるバックグラウンド反応の評価等のために使用することが計画されており、現在報告者は自身の担当する飛行時間検出器単体での解析と、その解析完了後に行う他検出器データとの統合に関する向けた準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CIRASAME基板用のファームウェア開発に関しては、MPPCバイアス電源制御用モジュールの作成を行い、実際にMPPCを取り付けての信号確認を行った。この際に、MPPCからのアナログ出力が観測できることと、MPPC読み出し用ASICであるCITIROC内のディスクリミネータの制御が正しく行われ、ディスクリ出力が正常に出力されることを確認した。 また、EMPHATIC実験におけるhigh-pビームライン用のデータ測定に関しては、2022年度に参加したPhase-1b、Phase-1cの2回のrunで、trigger数で22M countのデータ測定を行った。これらのrunは、新型コロナウイルスの影響で前年度のrunで使用できなかった検出器を追加し、Phase-1用のsetupとしては完全な状態でのデータ測定を行った。また、DAQソフトウェアの改良やトリガ検出器の追加など、測定されるデータの質を向上させるための試みも行われた。これらのrunでは検出器の追加等があり、それ以前のrunと比較して実験条件に違いがあるため、それらが測定データに与える影響の確認を行う必要がある。それらを踏まえた新たな解析を行っていることもあり、2022年度に測定したデータの解析は少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、昨年度の2回のビームタイムで取得したEMPHATIC実験のデータの解析を主に行い、本データを用いてhigh-pビームラインで用いる解析手法の評価を行う。 まずは、EMPHATIC実験で取得したデータのうち、報告者の担当する検出器である飛行時間検出器(TOF検出器)のデータの解析を行い、飛行時間の分解能改善のための補正方法の確立を行う。これと並行して、位置検出器などの他検出器のデータの解析についてEMPHATIC実験グループの他のメンバーと議論を行い、それらのデータとE50実験グループの方で既に保有している解析コードを組み合わせたトラッキング解析などを行う。これらの解析は、夏までに進める。 その後、TOF検出器の情報と他検出器の情報を組み合わせて、EMPHATIC実験でhigh-pビームライン用に測定したハドロン生成反応のデータの解析を行う。これによって、高運動量π中間子ビームを用いたハドロン生成反応の反応断面積を解析し、high-pビームラインでのバックグラウンド反応と、その除去に用いられる手法の評価を行うことを計画している。
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