2022 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災後における仏像の役割―誰もが仏像を作れる時代の信仰のかたち―
Project/Area Number |
21J40124
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
君島 彩子 東北大学, 国際文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 震災モニュメント / 三十三観音巡礼 / Material Religion / 仏像 / 慰霊碑 / 地蔵 / 観音 / 地蔵の被覆 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、伝統的な三十三観音巡礼に東日本大震災後にどのような変化をもたらしたのかを確認するため、山形県内陸部の最上三十三観音札所および、岩手県海岸部の気仙三十三観音札所の札所すべてを回り、仏像や記念碑の調査や聞き取りをおこなった。特に、気仙三十三観音札所は、大船渡市や陸前高田市の市民や僧侶と共に全行程をすべて徒歩で歩いたことで、震災以前の様子や震災の状況などの聞き取りをおこなうことができた。津波によって流失した仏像が発見されたことで新たな信仰が生み出される事例や、発見されなかったが皆で力を合わせて新しい仏像が作られるなかで新たな信仰が生まれるなど、物質文化としての仏像が信仰に与える影響が明らかになった。この内容は日本宗教学会第81回学術大会で口頭発表をおこなった。3月11日には南三陸町で慰霊祭に参列し13回忌の法要の様子を調査した。震災発生後からの変化や地域差などの検討をおこなった。 また2021年度に引き続き、東北地方における地蔵への被覆奉納の調査を岩手県、宮城県、福島県、山形県でおこなった。新型コロナウィル感染症の影響もあり地蔵に対するマスクの奉納が行われるなど、現代における特性が確認された。さらに山形県の内陸部では独自の被覆の形式があることも明らかになったため、約700体の地蔵の被覆調査をおこない、「宗教と社会」学会 第30回学術大会で口頭発表をおこなったほか、山形ビエンナーレ2022において地図の展示をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度、新型コロナウィルス感染症流行の影響もあり、予定していた聞き取り調査や巡礼の同行調査が出来なかったが、2022年度は、本研究において最も重要なフィールドワーク調査を予定通り行うことができた。特に岩手県の大船渡市や陸前高田市でのフィールドワークから、震災復興の中で仏像や仏像モニュメントがどのような役割をはたしたのかに関する検討をすることができた。また昨年に引き続き山形県内陸部において複数のフィールドワークをおこない、東日本大震災の被害が大きかった地域とそうでない地域の比較検討をすることができた。東北地方における仏像の調査は震災の影響だけでなく、新型コロナウィルスによるパンデミックによる影響も地蔵へのマスク奉納などの事例から明らかになった。本年度は複数のフィールドワーク調査により新たな視座を見出すことができ、その成果は複数の学会で口頭発表、そして芸術祭における作品という形で公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度も引き継続き、気仙三十三観音の徒歩巡礼の同行調査を行い、巡礼参加者や関係者からの聞き取りを行う。そして復興が進む被災地域の様子を含め社会における仏像の役割を検討する。また、仏像の制作者である仏師や彫刻家からも聞き取りを行う。その成果を論文として投稿する予定である。またこれまで調査してきた震災モニュメントや仏像を地図上で閲覧できる資料を作成しWEB上で閲覧できるようにする予定である。
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