2022 Fiscal Year Annual Research Report
地球外模擬有機物の付着力測定:惑星形成初期段階における有機物の役割の解明
Project/Area Number |
22J00091
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長足 友哉 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 付着力 / 有機物 / ダスト |
Outline of Annual Research Achievements |
惑星は固体微粒子(ダスト)が互いに合体成長を繰り返して形成したとされる一方,岩石質ダストは低付着性であるために成長が困難とされる.しかし,成層圏で採取されるダストは有機物に覆われており,このことが付着性に影響を与える可能性がある.本研究は,隕石・彗星有機物の合成反応の一つであるホルモース型反応で合成される有機物の付着力を測定し,ダスト成長過程に対する有機物の効果を理解することを目的としている. 令和4年度は,低温・真空環境での付着力測定に向けた新たな装置の開発,ホルモース型反応による有機物合成,遠心法による常温常圧での合成有機物の付着力測定を行った. 低温・真空環境での付着力測定を実現するため,当初は,振り子を衝突板に衝突させることで発生する衝撃加速度を用いて平板から有機物を引き離すのに必要な力(=付着力)を測定することを計画していたが,付着力を測定するのに十分に大きな加速度を振り子で発生させるには大型の装置が必要となるため,振り子の代わりに圧縮ばねを用いて衝撃加速度を発生させることにした.金属材,圧縮ばね,衝撃加速度測定装置を組み合わせることで衝撃加速度発生機構を実現し,現在,この機構を用いた付着力測定に向け,衝突板の材質や形状を変更することで発生する加速度の調整と,その機構に取り付けて内部での付着力測定を実現するための小型真空容器を設計中である. 一方,先行研究と同様の条件で,ホルモース型反応により地球外模擬有機物を合成し,その付着力の測定を,常温常圧での測定に適している遠心法を用いて行った.結果として,水溶性成分を含む合成有機物の付着力は触媒の潮解性が原因で常温常圧環境での測定が困難であった.一方,合成有機物から水溶性成分を除去した場合は測定可能だったが,その付着力は岩石質ダストの成長に大きく影響しうるほどには大きくないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温・真空環境での付着力測定のための衝撃加速度発生機構において,当初予定していた振り子の代わりに圧縮ばねを用いることに変更したため,付着力測定装置の開発はやや遅れている一方で,ホルモース型反応による地球外模擬有機物の合成と遠心法を用いた常温常圧での合成有機物の付着力測定に関しては当初の計画よりも進展しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に作製した圧縮ばねによる衝撃加速度発生機構を用いた付着力測定を実現する.付着力測定を内部で行うことのできる小型真空容器の作製と,様々な材質・形状の衝突板を購入することで発生する衝撃加速度の調整を行い,まずは常温常圧条件での付着力測定の実現を目指す.さらに,昨年度に実施した遠心法による水溶性成分を除去した合成有機物の付着力測定結果に基づき,新たな付着力測定装置の較正を行う.較正後,真空容器を減圧・冷却した状態での測定を実施し,その結果を,付着力をパラメタとしたダストの成長限界衝突速度に関する先行研究の結果と組み合わせることでダストの合体成長の可能性について評価することを予定している.
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