2023 Fiscal Year Research-status Report
実解析的手法による粘性流体に対するエネルギー保存性と正則性の解析
Project/Area Number |
22KJ0217
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 基記 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 非圧縮性オイラー方程式 / オンサガー予想 / 初期値問題の非適切性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究課題として, 領域上における粘性流体のエネルギー保存条件について考察した. 領域上における流体のエネルギー保存条件を体系化するためには, 非線形項の分数階微分評価を行う必要がある. 特に, 全空間や周期境界条件下では調和解析的手法によって特徴付けられるベソフ空間を用いて非線形項の分数階微分評価を導出することが主流であった. しかしながら, 従来の手法による非線形項の評価を導くことが困難であったため, 領域上におけるエネルギー等式の十分条件の結果は非圧縮性流体の研究においても研究の余地があった. そこで, 本研究の課題である領域上における圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の解のエネルギー保存条件を明らかにするために, 当初の計画を変更して近年研究が進められている領域上のベソフ空間を導入し, 非圧縮性流体の非線形項の評価の導出を行った. 具体的には, 非圧縮性非粘性流体の運動を表すオイラー方程式の非線形項について交換子評価を導出することから着手し, 近年研究が進んでいる領域上のベソフ空間上を用いて非線形項の交換子評価を導いた. 今回導いた非線形項の交換子評価は, Cheskidov-Constantin-Friedlander-Shvydkoy(2008) によるエネルギー保存条件で用いられている指数と同じ条件となっている. このことから, 本研究で導いた評価は全空間上における非圧縮性オイラー方程式のエネルギー保存条件に対応した評価を領域上で導いた結果になっていると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で掲げている課題は領域上における圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式のエネルギー保存条件であるが, 現状得られている成果は整数階微分の結果にとどまっている. この理由は, 領域上における非線形項の分数階評価の導出手法の困難性によっている. 実際, 全空間における非圧縮性非粘性流体の運動を表すオイラー方程式に対する非線形項の評価は, ベソフ空間の 調和解析的性質が必要であり, 領域上に適用することは困難であった. 近年作用素とスペクトル解析を用いたベソフ空間を定義する研究が推進されている. 本研究では上述のベソフ空間の性質を用いて領域上における非線形項の評価を導出することで研究を推進した. 一方で, 本課題で掲げていた圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式のエネルギー保存条件を明らかにするためには,, 非圧縮性非粘性流体の運動を表すオイラー方程式の非線形項の評価の導出から始める必要があった. また, ベソフ空間を定義する際に用いる作用素と方程式が満たす境界条件の関係性を明らかにする必要も生じた. 以上の理由から本研究課題は当初の想定よりやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度研究を進めてきた非圧縮性オイラー方程式の解のエネルギー保存条件に関する研究を推進する. その後, 本研究で用いたベソフ空間の作用素の条件を変更した場合にも同様の交換子評価を導く. 上述の手法を圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式に応用し, 本研究の課題である領域上における圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式の解のエネルギー保存条件を明らかにする.
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Causes of Carryover |
本年度は領域上における粘性流体の解のエネルギー保存条件について研究を行なっていた. 本年度の進捗予定としては, 非圧縮性非粘性流体の運動を表すオイラー方程式の解がエネルギーを保存するための十分条件について研究成果をまとめ, 論文として公開する予定であった. 特に, 本研究で得られた成果を査読付き国際学術雑誌で公開するために必要な費用としてオープンアクセス費用として本研究費を計上していた. しかしながら, 領域上における評価の導出に時間を要したため, 本研究の進捗は想定よりも遅れている. そのため, 本研究を論文としてまとめてのち公開するため, 論文のオープンアクセス費用として本費用を次年度に延長する.
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Research Products
(3 results)