2022 Fiscal Year Annual Research Report
機械学習による進化分子工学の加速:抗体分子の機能創出を目指して
Project/Area Number |
22J10390
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河田 早矢 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 進化分子工学 / タンパク質 / 抗体 / ファージ提示法 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実験的に作製できる限られた数の変異タンパク質集団のデータを手がかりに、理論上存在し得る膨大な種類の変異体(配列空間)の機能指向を機械学習により予測することで、分子標的薬として利用可能な結合機能をもつ抗体タンパク質を確実に創出できる進化分子工学プロセスの開発を目標としている。 本年度は、(1)次世代シーケンサー(NGS)解析を活用した機械学習データの作成、(2)機械学習によるアミノ酸配列空間の機能指向予測を行い、本研究プロセスの有効性を検証した。 (1)NGS解析を活用した機械学習データの作成:結合機能陽性抗体のアミノ酸配列予測に向け、配列と機能情報を紐づけた学習データの構築を試みた。まず、相補性決定領域(CDR)にランダム変異導入した抗体断片提示M13ファージライブラリーを作製し、標的分子に対する結合選択操作を行った。次に、結合選択操作過程における変異体群のNGS解析を行い、各変異体の占有率変化を評価した結果、結合陽性な変異体と結合陰性な変異体では占有率の上昇度合いに違いがあることを見出した。この結果から、NGS解析を活用し、結合選択操作過程における占有率上昇度合いを結合機能として紐づけることで、配列空間の機能指向予測に向けた機械学習データを作成できた。 (2)機械学習によるアミノ酸配列空間の機能指向予測:NGS解析により作成した学習データを機械学習に提供し、アミノ酸配列空間の機能指向を予測した結果、CDRの特定の残基位置の配列が結合機能に重要であることが示唆された。そこで、機械学習が提案した有望アミノ酸配列から成る変異体を実際に作製し結合活性評価を行ったところ、従来法により発見した変異体よりも10倍程度結合力の高い変異体を取得できた。以上の結果から、結合選択操作過程における変異体の占有率情報を基にした機械学習により、結合力の高い抗体を取得できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、次世代シーケンサー解析を活用することで機械学習データを作成し、そのデータを基に機械学習予測を行うことで結合陽性な抗体を取得することができており、おおむね期待した結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、より高い結合力の抗体を取得するためのプロセス開発を進めていく予定である。そのために、学習データの基となる変異体群のアミノ酸配列設計を検討し、学習データの作成・機械学習予測・提案された変異体の機能評価といった一連のサイクルを繰り返し実施することで、分子標的薬として利用可能な高結合力抗体の創出を目指す。
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