2022 Fiscal Year Annual Research Report
ベイズ推定を活用した確率論的手法による非破壊検査不確実性の定量的評価手法の開発
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22J10460
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冨澤 拓真 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 渦電流探傷試験 / サイジング / 確率論的評価 / ベイズ推定 / 非磁性体 / 疲労割れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は数値解析を援用したきず検出確率(POD)モデルの開発、ステンレス鋼平板スリットに対する渦電流探傷試験を対象とした確率論的きず寸法評価手法の開発および疲労割れの製作を行った。 数値解析を援用したPODモデルの開発では、溶接部割れに対する渦電流探傷試験を対象とした検討を行い、実測値での適用性評価にて提案手法の有効性が示された。当モデルは極めて単純な体系での数値解析結果と測定結果によるきず大きさ-きず信号分布の回帰分析結果に基づくものであり、上記の検討を通して確率論的きず寸法評価における尤度関数の導出に必要な回帰分析に関する知見を得ることが出来た。 確率論的きず寸法評価手法については、ステンレス鋼平板上のスリットに対する渦電流探傷試験を対象とした検討を進めている。本年度は数値解析データに基づく適用性評価が終了し、提案手法の適用性が示された。一方で実測値を用いた提案手法の適用性評価は未実施である。ただし試験体は所属研究室が保有しているものを用い、渦電流探傷試験も既に終了しているため、提案手法の実測値を用いた適用性評価は迅速に実施可能であり、来年度始めの早い時期の完了を予定している。 疲労割れ試験体は、20体超のステンレス鋼平板に対する疲労試験が既に終了しており、目視ではあるが寸法の異なる疲労割れの存在が確認されている。ステンレス鋼平板の表面に残存する初期ノッチの除去が未実施であるため、疲労割れの実寸法評価および渦電流探傷信号の収集は来年度を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は溶接部割れに対する渦電流探傷試験を対象としたきず検出確率(POD)分析手法の開発を通して、確率論的きず寸法評価で必要になる尤度関数導出のための回帰分析手法についての検討を進めることが出来た。加えて、数値解析ベースではあるがステンレス鋼平板スリットに対する渦電流探傷試験を対象とした確率論的きず寸法評価手法の開発を進めることで、ベイズ推定における事後分布サンプリング手法の検討も進み、当初の計画通りに確率論的きず寸法評価における回帰分析およびベイズ推定方法の開発に目途を付けることが出来た。来年度始めにステンレス鋼平板を対象として実測値での提案手法の適用性評価を行う予定であるが、大きな問題は予想されていない。 疲労試験についても、上述の回帰分析の検討結果、数値解析結果から大体の必要サンプル数・きず寸法の目途は得られ、20個超の疲労試験体の製作を終えることが出来た。当初の予定であった40個には届かなかったものの、これまでの検討から疲労試験体は20個程度で大枠の検討は問題なく完遂できると考えているため、疲労割れ試験体の製作も計画通りであると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度始めにはステンレス鋼平板上スリットに対する渦電流探傷試験の測定結果を用いた確率論的きず寸法評価手法の適用性評価を完了する予定である。また、疲労試験体も多くが疲労試験の段階を終了しており、今後は疲労割れ導入のために加工した初期ノッチの除去や、渦電流探傷試験の実施、実寸法測定のための減肉加工を経て提案手法の適用性評価に利用可能な形でのデータ取得を順次実施することを計画している。また提案手法の適用評価結果に応じて追加の試験体製作を行う可能性がある。試験データが得られたのち、迅速に疲労割れに対する確率論的きず寸法評価手法の適用性評価を実施予定である。 また、研究計画以上の取り組みとして、渦電流探傷試験による肉厚評価への提案手法の適用にも着手し始めている。こちらは疲労割れに比べて単純な体系であることから、より容易に今回の解析モデルの性質を評価可能であると考えられ、当該手法のより深い理解の一助になると考えている。こちらについても順次試験体の購入等進めるが、肉厚評価に要する試験体は単純な形状であるため調達および計測は極めて容易であり、研究期間内に十分遂行可能であると考えられる。
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