2023 Fiscal Year Annual Research Report
薄膜エピタキシーによる重元素ニクタイド正方格子単結晶の電子物性の開拓
Project/Area Number |
22KJ0277
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 裕貴 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | Pn正方格子 / p型高移動度半金属 / エピタキシャル薄膜 / 多層膜固相エピタキシー法 / 層状物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は多層膜固相エピタキシー法を用いてLa2O2Sbと同じ結晶構造をもつ物質であるLa2O2Bi薄膜の合成を行った。X線光電子分光により、異常原子価であるBiマイナス2価を支持する結果がえられた。また、ホール測定において温度依存性のキャリア反転が観測されたこと。吸光度測定においてバンドギャップが存在しなかったこと、これら2点から、La2O2Biの半金属的な性質が示唆された。さらに低温領域において、過去のLa2O2.08Biバルクの値と比較しておよそ3倍の高いp型の高移動度を観測した。なおLa2O2Biに関する成果についてはApplied Nano Materials誌に掲載された。 前年度に薄膜が劣化したために成功しなかったLa2O2Sb薄膜のTEM測定について、九州大学超顕微センターの協力をえて、部分的に劣化の進んだ薄膜から、劣化のない領域を選択的に取得・観測する手法を用いて、La2O2Sb薄膜の断面TEM観察に成功した。断面にはLa2O2Sbの結晶構造が確認され、未反応のアモルファス層が全く存在しなかったことから、固相反応が完全に進展しており、La2O2Sb薄膜における高い電気伝導率がアモルファス層など不純物層に由来するものではなく、La2O2Sb自体に由来するものであることを明らかにした。 さらに、前年度にDarmstadt工科大学にてMBE(分子線エピタキシー)法を用いて合成した薄膜について物性評価を行った。電気伝導率は多層膜エピタキシー法で合成したものと同程度を示した一方、キャリア密度は10倍、移動度は10分の1程度であった。これはMBEで合成した膜の高いアンチモン欠損率によるものと考えられる。この結果からLaサイトの置換によるドーピングに頼ることなく、Sbサイトの欠損量制御のみでキャリア制御ができる可能性が示された。
|