2022 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒による酸化的カップリング反応を基盤とした二量体アルカロイドの収束的合成戦略
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22J20169
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山梨 政人 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | アルカロイド / 全合成 / 二量体 / 酸素酸化 / 鉄フタロシアニン / 化学選択性 / フタロシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、マバクリン-アクアミリン二量体型インドールアルカロイドの一種であるプレイオコリン、およびプレイオクラリンの合成研究に取り組んだ。はじめに、これら天然物に共通するベンゾフロ[2.3-b]インドリン骨格構築法を検討した。モデル基質として5-ヒドロキシインドリン、およびジメチルテトラヒドロ-β-カルボリンを用い、種々条件を検討した。その結果、生体内酸化酵素P450に着想を得たオクタカルボキシ鉄フタロシアニン錯体を触媒、酸素分子をバルク酸化剤として作用させることで、5-ヒドロキシインドリンの酸化を介するカルボリンユニットとの形式的[3+2]環化付加反応が円滑に進行することがわかった。さらに、本反応は医薬品として取り扱われている5環性アルカロイドのヨヒンビンにおいても、所望の反応が進行した。 ベンゾフロ[2.3-b]インドリン骨格構築法を確立したため、二量体型インドールアルカロイド、プレイオクラリンの単量体であるカサフォリン誘導体の合成研究に着手した。まず、5-メトキシトリプタミンから誘導されるテトラヒドロ-β-カルボリンに対し、アリルメチルカーボネートとパラジウム触媒を用いた、4a位選択的かつジアステレオ選択的なアリル化によってアリル基を導入した。その後、閉環メタセシス反応によって四環性インドリンを合成した。得られた四環性インドリンに対して、還元的Heck反応の条件あるいはラジカル環化の条件を試みたが、高度に歪んだかご型構造であるメタノキノリジジン骨格は形成できなかった。本年度得られた知見をもとに、新たな合成経路により単量体であるカサフォリン誘導体を合成する予定である。すなわち、アシルテルリドを用いた脱一酸化炭素を経るラジカル環化、またはアミンからのSN2反応によるメタノキノリジジン骨格構築の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マバクリン-アクアミリン二量体型インドールアルカロイド類に共通するベンゾフロ[2,3-b]インドリン骨格構築法の開発、および単量体ユニット、カサフォリン誘導体の合成研究を精力的に行った。前者では、モデル基質を用いた詳細な検討の結果、生体内酸化酵素を模倣したオクタカルボキシ鉄フタロシアニン錯体と分子状酸素を酸化剤に用いることで、効率性の高い新規合成法を見出している。本手法は、医薬品であるヨヒンビンへも適用可能であり、二量体型アルカロイドの収束的合成の足掛かりとなる基盤技術となることが期待される。後者に関しては、市販品から誘導可能なテトラヒドロ-β-カルボリン誘導体に対する、パラジウム触媒を用いた位置選択的、かつ立体選択的なアリル化と、続く閉環メタセシス反応によって、四環性インドリンの迅速な合成を達成している。その後の還元的Heck反応やラジカル環化の条件では、目的とするメタノキノリジジン骨格を形成できなかったが、現在、アシルテルリドを用いた脱一酸化炭素を経るラジカル環化を経る新たな合成戦略のもと単量体の全合成に取り組んでいる。本年度得られた知見により、今後、二量体型天然物プレイオコリンやプレイオクラリンの世界初の全合成の遂行が期待される。以上の研究成果から、現在までに順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、まず、本年度確立した酸化的二量化の条件を10-ヒドロキシビンコリンに適用し、プレイオカルパミンとの酸化的カップリング反応に付すことで、マバクリン-アクアミリン二量体型インドールアルカロイド、プレイオコリンの世界初の全合成を達成する予定である。この際、モデル基質との反応性の違いが予測されるため、天然物を用いた反応条件の最適化を行う必要があると考えられる。さらに、二量体型インドールアルカロイド類の生物活性評価を視野にいれ、酸化的カップリングに用いる基質として天然物のエナンチオマー体やジアステレオマー体を別途合成する予定である。 一方、プレイオクラリンの合成研究においては、本年度に引き続き、単量体ユニットであるカサフォリン誘導体、およびストリクタミン誘導体の合成に着手する。 高度に歪んだかご型構造の構築においては、先行研究からも非常に困難であることが予想される。そこで、新たな合成経路では、アシルテルリドを前駆体に設定し、脱一酸化炭素を経由するラジカル環化の条件や、アミンからの求核付加による環化を検討することで、メタノキノリジジン骨格の構築を目指し、カサフォリン、およびストリクタミンの全合成を達成する予定である。
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