2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Novel Intracellular Analysis Methods by Integrating Raman Imaging and Machine Learning
Project/Area Number |
22J20231
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大智 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | ラマンイメージング / Deep learning / 細胞内温度 / CARS顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,主に「ラマンイメージングとDeep learningによる単一細胞内の温度測定手法の開発」及び「コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)顕微鏡による細胞のラマンイメージ測定手法の確立」を進めた.温度測定については,単一細胞内の各領域(核と細胞質)について,その平均温度を約0.5℃の誤差で推定する手法の確立に成功した.この手法ではまず,様々な温度におけるHeLa細胞のスペクトルを取得することで教師データを作成した.顕微鏡用培養システムを用いてHeLa細胞を培養したディッシュ全体の温度を制御しながら,各温度におけるHeLa細胞のラマンイメージ(スペクトル)を取得した.得られたラマンイメージと対応する温度の値を用いて畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を学習した.得られたCNNはイメージ上の1ピクセル(約1平方μmの領域に対応)当たり約1.3℃の誤差で温度を推定することができた.このCNNを用い,細胞内の核と細胞質の領域について平均値を求めることで,各領域の温度を約0.5℃の誤差で測定することが可能である.CARS顕微鏡による細胞のラマンイメージについては,CARSイメージ測定システムの構築及び単一細胞のCARSイメージ測定手法の開発を行った.まず,所属研究室のピコ秒パルスレーザー及び光学顕微鏡を用いることで,顕微鏡下でCARS光を検出しスペクトルを取得することに成功した.更に,顕微鏡にピエゾステージを導入し,CCDカメラ及びピエゾステージを同時に制御するソフトウェアを製作した.これによりCARSスペクトルを連続測定し,単一細胞のCARSハイパースペクトルイメージを取得するシステムの開発に成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内温度の測定については,当初の研究計画通りにサンプル全体の温度を制御することで取得したラマンイメージ(教師データ)を用いることで単一細胞内の温度を推定する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の開発に成功している.このCNNは1つの細胞に対し核や細胞質内の温度を1.0°C未満の誤差で推定することができるため,今後の研究として,種々の生命現象や外部摂動による細胞内温度の変化を検出することに応用が可能であると考えられる. コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)顕微鏡については,構築した顕微鏡を用いてCARSスペクトルの取得に成功している.更に,ピエゾステージを用いた自作の制御用ソフトウェアの開発も完了しており,これを用いることで単一細胞のCARSイメージを取得することにも成功している.したがって,本研究の目的の一つである細胞内小器官のラベルフリーイメージング手法の開発に用いる測定装置の開発は順調であるといえる. 以上の実績は概して当初の研究計画通りであり,したがって本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞内温度の測定について,現時点では単一細胞内の核や細胞質全体について約0.5℃の誤差で測定する手法を実現できている.しかし,本手法は最終的に単一細胞内部における温度分布の可視化すなわち温度分布イメージングに発展させることを目標としている.これにはラマンイメージ中の1ピクセル(測定点)当たりにおいても十分な測定精度を実現する必要があるが,現状での測定誤差は約1.3℃となっている.単一細胞内の温度イメージングを実現するためには1ピクセル当たりの測定誤差が少なくとも1.0℃を下回る必要があると考えている.今後の研究ではスペクトルのS/N比の改善等に代表される教師データの改善を行い,測定精度の向上を目指す. 現時点で実現している核や細胞質全体の温度に対する測定手法については,今後この手法を応用した研究を行うことを計画している.ある種の疾病状態にある細胞においては,その細胞内温度が上昇すると考えられている.今後は,実際にこの疾病のモデル細胞のラマンイメージを取得し,今回開発した細胞内温度の測定手法を用いることでこの疾病と細胞内温度の関係を解明することを目標とする. CARS顕微鏡によって得られるラマンスペクトルは一般的な自発ラマン散乱のスペクトルとは大きく形状が異なり,そこから物質の量的情報を得ることは困難である.これは,非共鳴バックグラウンド(NRB)によるものであり,NRBを除去する方法としては最大エントロピー法などの様々な手法が提案されている.今後の研究では,まずこれらの手法を検討し,当研究室で得られたCARSイメージにおいてスペクトルの詳細な解析を行うための手順を確立する.更にCARS顕微鏡に改良を施し,蛍光イメージとCARSイメージの同時測定を行えるようにする.これにより本研究の目的の一つである細胞内小器官のラベルフリーイメージングに用いる教師データの作成を目指す.
|