2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内反応場の自在制御に向けた相分離分子ネットワークのボトムアップ構築
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22J20558
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安海 一優 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | RNA / 相分離 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、生体分子が引き起こす相分離現象について、ネットワーク構造に焦点を当てて分子設計を行うことで人工的に再構築し、構成論的な現象解明、そして制御技術の開発を目指す。そこで2種類の生体分子であるRNAとタンパク質にモジュール性を持たせて設計することにより、様々な分子間相互作用や構造多様性を利用し、ネットワーク構造を精密に作りこむ。 複数の異なるRNA-RNA相互作用の親和性を付与したモジュールを設計し、分子集合体を作成した。異なる分子間相互作用を有しているモジュールを用いて実験を行い、観測された分子集合体の流動性をFRAPによって評価した。その結果、設計したモジュールを用いるとゲルに近い、低い流動性を示した。これは液体から固体といった天然の細胞で観測される相分離現象の一部の再構築に成功した結果といえる。 また、RNAとタンパク質の分子設計、またそれらの分子が自己集合し構築されるネットワーク構造の形成を評価するにあたり次のような手法を発案した。蛍光分子により修飾されたRNAを用いて、RNAの単位ユニット、そしてネットワーク構造中におけるRNAユニットの立体構造情報を間接的に取得する方法である。これにはFRETという蛍光分子間のエネルギー伝達によって2つの対象間の距離を評価する原理を利用している。RNAが設計通りに構築できていれば、FRETが2段階で起こり、UV波長域の光を照射することで長波長の赤色波長域の蛍光を発するというものである。ここでは青、緑、赤の3種類の色素を使い分けることで、どのネットワークモジュールがうまく形成していないか、分子集合体内のどの箇所に不具合が起きているかを蛍光観察によって視覚的に評価することができ、かつ色によってその程度を分けることができる。現在上記の評価方法によって分子集合体内部のネットワーク構造、RNA分子の情報取得するための実験を実践している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数種類のRNAの設計とモジュール同士の結合、ユニットの形成評価が進んだ。さらに従来分子集合体の内部構造の情報を取得する方法が確立していなかったが、本課題の中で2段階のFRET現象を利用した方法論を提案することができ、相分離現象の解明と定量評価技術の開発に貢献できたと考えている。 これらは研究開始当初では発想できていなかった手法であり、また得られた結果として分子集合体の性質、設計した分子モジュールの多様化を達成できたことから、本課題がおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに設計した分子を用いて、より網羅的に分子同士を組み合わせて分子集合体の形成や内部構造の評価、検証を行っていく。また機能性分子である複数の候補分子が分子集合体内部、また近縁に局在するかを調査し、翻訳や転写といった生物学的機能に本質的な反応に対していかなる影響を及ぼすか、反応の場となるポテンシャルを有しているかを評価していく。
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Research Products
(1 results)