2022 Fiscal Year Annual Research Report
スラブ内揮発成分挙動の解明:変成帯横断試料マルチ元素・同位体解析と高圧実験の統合
Project/Area Number |
22J21064
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原田 浩伸 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 揮発成分 / 高圧変成岩 / プレート境界岩 / 白雲母 / 酸素同位体 / 水素同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、世界で最も多くかつ詳細に研究がなされてきた四国中央部三波川帯の温度構造に直交するよう採取された試料(トラバース試料)を用いた複数元素・同位体組成の解析に基づいて、沈み込みスラブ内における揮発成分の振る舞いについて新たな情報の獲得に取り組むものである。研究初年度である2022年度はまず、トラバース試料(84試料)について、保管されていた岡山県赤磐市から仙台市までの輸送を行った。年度前半には移送した岩石試料に対して、FE-SEM-EDS、EPMA、顕微ラマン分光装置による鉱物組織観察・組成分析、流体包有物解析を行った。また、前年度に採取した三波川帯の変成炭酸塩岩試料について新たに岩石学的な記載及び炭素・酸素同位体組成分析を行い、変成炭酸塩岩の起源が海洋性炭酸塩であることを明らかにした。さらに、予察的に得ていたトラバース試料中白雲母の酸素・水素同位体組成についての検討を進め、上述した変成炭酸塩岩の炭素・酸素同位体組成とを併せた考察から、白雲母は高圧変成岩が上昇する際に関与した流体の化学組成を記録している可能性が明らかとなった。11月から12月にかけては米ペンシルベニア州立大学に滞在し、Sr同位体組成分析を行い、トラバース試料の一部についてSr同位体比を得た。年度終盤からは、沈み込む堆積物における炭素の挙動の理解のために、泥質変成岩から分離された炭質物の解析を開始し、顕微ラマン分光装置による変成温度推定と並行して、現在炭素同位体組成分析の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡山県赤磐市に保管されていた岩石試料の移送を行い、それら全ての岩石試料に対する一次的な記載として鉱物組織観察・組成分析を完了させた。また、予察的に得ていた白雲母の酸素・水素同位体組成についての検討を進めた。今年度に予定していた流体包有物解析については、形成段階を束縛できるものが非常に稀であるため全試料に対する解析を行えなかったが、その一方で、白雲母のSr同位体比分析を開始し、一部試料についてはデータを得た。以上から、研究の進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に引き続いて、Sr同位体組成分析を進めることに加えて、白雲母の微量元素組成分析を行う。また、四国中央部三波川帯の泥質片岩から分離された炭質物について炭素同位体組成分析及び研究室設置の顕微ラマン分光装置を用いた変成温度推定を行う。炭質物のラマンスペクトル取得における最適な条件を模索し、データ取得から解析までの流れを確立する。
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