2022 Fiscal Year Annual Research Report
エクロジャイト化に伴うスラブ内流体の周期活動:先端的鉱物ナノ分析による解読
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22J21894
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福島 諒 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 脱水反応 / エクロジャイト / ざくろ石 / オンファス輝石 / オシラトリー累帯 / 逆位相領域 / フェーズフィールド法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、沈み込み帯火山フロント直下付近で変成した海洋地殻(エクロジャイト)を構成するざくろ石・オンファス輝石が保存する微細組織に着目し、玄武岩質の海洋地殻が脱水しながらエクロジャイトとなる過程における流体活動の周期性及びその原因の解明を目指すものである。研究初年度である2022年度は主に、(1) 西アルプスなどにおける青色片岩・エクロジャイト試料の採取、(2) 熱力学計算を用いた、ざくろ石中に記録される元素濃度周期構造(オシラトリー累帯)の再現・予測、そして (3) オンファス輝石中逆位相領域成長の数値モデリングを行った。さらに、オンファス輝石の化学組成差および熱イベントが微細組織に与える影響を評価するための予察的研究として、 (4) ピストンシリンダー型圧力発生装置・単結晶X線回折装置・集束イオンビーム装置・透過電子顕微鏡を用いた天然オンファス輝石試料の加熱実験に取り組んだ。 (2) では変成岩の熱力学解析に広く用いられている計算ソフトウェアを活用し、流体圧変動・深度がざくろ石の平衡組成に与える影響を整理した。(3) では、地球科学分野への応用が未だほとんどなされていないフェーズフィールド法の適用に取り組み、オンファス輝石中のカチオン秩序化にかかる時間が大規模流体活動の周期と比較可能であることを明らかにした。(4) については、透過電子顕微鏡を用いて糸魚川(青海)産オンファス輝石の微細組織の特徴づけを行ったほか、同産地の試料を900℃以上の2条件で加熱処理し、カチオン秩序度の変化を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、周期的流体活動の解読に最適な天然の低温エクロジャイト試料の選別と一次記載、およびざくろ石中オンファス輝石包有物の微細組織観察を中心に実施予定であった。試料選別については、熱力学計算によるざくろ石中主要元素組成の推定に基づき、研究対象とする主試料をグアテマラ・糸魚川(青海)産エクロジャイトに絞り込むことができた。一方オンファス輝石包有物の微細組織観察は十分に実施できなかったが、初年度には予定していなかった逆位相領域成長のモデリングおよび予察的高圧実験に成功したことから、オンファス輝石中微細組織形成の時間スケールについて重要な知見を得ることができた。したがって本年度は十分な進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
オンファス輝石の高圧加熱実験をより高温・長時間の条件で実施し、様々なカチオン秩序度のオンファス輝石が呈する微細組織を観察・定量化する。また天然のエクロジャイト試料に対して、引き続きオンファス輝石包有物中の逆位相領域およびざくろ石の組成累帯を観察し、モデリングを併用した解析に取り組む。
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