2023 Fiscal Year Annual Research Report
戦後西ドイツ公共図書館の「非ナチ化・民主化」の実相 制度・理念・実践の比較分析
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22KJ0335
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
松井 健人 東洋大学, 文学部, 助教
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 民衆図書館 / 戦後ドイツ / 教育理念 / 国境図書館 / 民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、戦後西ドイツの図書館員について、特に戦前期・ナチ期より活躍をつづけたF・シュリーヴァーとW・シュスターについて検討を行った。 結果、戦後西ドイツにおいても図書館理念については確かにナチ期の民族主義的な意思際は後退しているものの、依然として「民族(Volk)」を理念的支柱に据え、図書館員当人らは活動を連続的に捉えて言説を展開していたことが判明した。また、国境図書館というドイツ本国と他国との隣接国境地帯における図書館に対して、依然としてドイツのナショナル・アイデンティティを支援する教育施設として把握がなされていたことも判明した。そして、そもそもナチ期において中心的に活動した図書館員らもその活動においては全く支障なく、あるいはわずかな中断期間を経由することで、引き続き戦後西ドイツにおいても積極的に図書館活動を展開し、図書館言説を発表していったことが判明した。 なお、戦前期図書館におけるナショナル・アイデンティティについては、松井健人「ヴァイマル期ドイツ図書館と満鉄図書館の交叉? ――衛藤利夫の図書館論の検討」として『日本文学文化』(東洋大学日本文学文化学会)に論文を掲載した。また、戦前期を中心として一部戦後期を含むドイツ国境図書館の活動については、「読書する共同体の夢――戦間期ドイツ・日本の国境図書館の理念と活動」として国際共同研究加速基金「日独近代化における〈国民文化〉と宗教性」2023年度研究会において研究発表を行った。研究年度としての成果は以上であるが、次年度以降は本研究課題において得られた成果を査読研究論文として刊行し、広く公開していきたい。
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