2022 Fiscal Year Annual Research Report
近世初期の茶の湯における古典文学の影響 ―小堀遠州を中心に―
Project/Area Number |
21J00752
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
工藤 隆彰 筑波大学, 人文社会系, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 小堀遠州 / 古田織部 / 和歌 / 連歌 / 俳諧 / 茶の湯 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に続き、小堀遠州とその周辺の人々が関わる茶会記・名物記(道具帳)・書状、茶の湯の伝書・聞書、歌集・紀行文等の文学作品で、既に翻刻が存在するものから、①遠州が詠んだ和歌・連歌・狂歌・俳諧、②遠州の周辺で掛物・書院飾として使用された文学作品、及び茶の湯の聞書・伝書で引用された歌論・詠作の情報を抽出・整理した。 また、柿衞文庫蔵『小堀遠州師十七回忌百韻』・綿屋文庫蔵『小堀遠州発句集』等、翻刻・影印が未紹介のものを中心に、資料の原本の書誌調査・撮影・翻刻に着手した。 得られた主な成果・今後の課題として、遠州(正一・宗甫)には同名別人の連歌作者が近い時代に存在したことが確認され、遠州の連歌を収集・紹介する際にはその人物の作品との区別が必要となる。そして、遠州の連歌として最も注目していた資料で、現在のところ孤本である『小堀遠州師十七回忌百韻』は、先述の同名別人の存在や原本の筆跡等から、遠州自筆とされている従来の認識に疑問が生じた。今年度の調査を基に、今後他の遠州の遺墨との比較検討を行う予定である。 さらに、茶道具としては古田織部が取りあげて以降名物に位置付けられたと思しい、歌人の東常縁の詠作や手跡の使用は、織部の弟子である遠州も踏襲していた。そして、遠州と同時代の茶人達にも使用が広がりつつあったことが書状等から確認され、また値段の高騰も仮名草子等から窺える。このような織部から遠州に継承された常縁の遺墨の使用は、常縁が織部・遠州と同じ武家であった点に一因があることを考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は昨年度同様、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止への対策として、移動の自粛要請や各資料の所蔵先の利用制限が続いたことから、研究計画の中核であった複数の資料の調査が困難な状況にあった。このため、当初構想していた予定に大幅な変更の必要が生じ、資料の悉皆調査を前提とする課題については、研究計画の遂行・研究成果の公表を翌年度以降に持ち越すこととなった。 一方で、今年度と翌年度以降の研究計画を一部入れ替え、採用期間全体の研究計画のなかで遂行可能な課題に着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の資料の調査は当初の研究計画の一部に留まったが、翌年度には各所蔵先の利用制限の解除が拡大することも見込まれ、改めての調査に向けて既に準備を進めている。翌年度は、本来今年度に予定していたものの遂行できなかった、遠州及び彼と交流した人々の文学作品・書状・記録類の原本の調査を実施する。調査は遠州の文学作品から取り組み、関西圏の所蔵機関から順次閲覧・複写申請を行う。ただし、遠州及びその門流による茶の湯の聞書・伝書の所蔵機関が比較的近郊にある場合、同じ旅程のなかに適宜組み入れて確認していく。そして当代の歌人・連歌作者達との関係、各文学作品の成立背景の整理から、遠州の文学活動の全体像を明らかにすることを目指す。
|