2023 Fiscal Year Annual Research Report
近世初期の茶の湯における古典文学の影響 ―小堀遠州を中心に―
Project/Area Number |
22KJ0345
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
工藤 隆彰 筑波大学, 人文社会系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 小堀遠州 / 古田織部 / 和歌 / 連歌 / 茶の湯 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は前年度までの成果の一部である、茶書における和歌・連歌の詠作の引用をめぐる古田織部から小堀遠州、そして以降の茶の湯への影響の考察を含む「古田織部と連歌 ─近衛信尹との両吟百韻及び茶の湯への影響─」と題した論文を、俳文学会編『連歌俳諧研究』第145号(2023年9月)で発表した。 また、掛物・書院飾等の茶道具として歌人・連歌作者の詠作や手跡を用いることが、茶の湯の黎明期から遠州へ至るまでにどのような流れを経ていたかとともに、そのなかで織部による東常縁関連の遺墨の起用が遠州へ踏襲されていたこととその背景を考察し、「茶道具における文学作品の使用― 小堀遠州に至るまで―」(仮題)と題する論文として、学術雑誌へ投稿する準備を進めた。 研究期間全体を通じての他の成果としては、先行研究でほとんど取りあげられていない連歌をめぐる動向を含む、遠州の文学活動の全体像を明らかにすることを試みた。柿衞文庫蔵『小堀遠州師十七回忌百韻』をはじめとする翻刻・影印が未紹介のものを中心に、資料の原本の書誌調査・翻刻も行いながら考察を進めた。遠州には同名別人の連歌作者が近い時代に存在したことが確認され、文学作品を含む遠州の資料を収集・整理する際には、その人物の資料との区別が必要であることが明らかになった。そして、遠州の連歌の作品で自筆と見なされてきた柿衞文庫蔵『小堀遠州師十七回忌百韻』は、先述の同名別人の存在や原本の筆跡等から、従来の認識に疑問が生じた。これらの成果も今後論文として発表する予定であり、特に『小堀遠州師十七回忌百韻』の筆者については、先述「古田織部と連歌 ─近衛信尹との両吟百韻及び茶の湯への影響─」で言及した織部・信尹両吟百韻の伝本の筆者をめぐる疑問と併せて、古筆学等の見地も踏まえた発展的な課題として考察を進めることを計画している。
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