2021 Fiscal Year Annual Research Report
追従型ピンポイント立体音響提示に基づくユーザーの認知と興味の整合技術
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21J20397
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
倉友 乃康 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 空間デザイン / デジタルサイネージ / パラメトリックスピーカー / パーソナライゼーション / 広告 / 可聴閾値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではデジタルサイネージの音出力による広告効果向上と空間快適性維持のトレードオフ関係の解消を目的とした、「見る人にだけ聞こえる」デジタルサイネージシステムの提案及び効果検証を行なった。提案システムは人物検知・追跡カメラとパラメトリックスピーカーを用いており、オンデマンドかつピンポイントな音提示システムを構築した。広告印象及び音を因子とする空間快適性の評価と、それぞれの指標に影響を与える広告のカテゴリーについて実験を通して分析を行った。従来のデジタルサイネージシステムとの比較を行う参加者実験を通して、本システムは空間快適性の維持と騒音レベルの低下が確認された。また、参加者による広告印象評価については、ラウドスピーカーを用いる場合には及ばないものの、無音で広告提示する場合に比べて印象に残りやすいことがわかった。さらに、提案システムを用いる場合には音楽を主体とした広告を用いることで無音や他のカテゴリーよりも印象に残りやすいことが明らかとなった。これらは顧客の購買行動と広告による顧客への説得方法の関係である精緻化見込みモデルに新たな知見を提供する結果となった。 続いて、パラメトリックスピーカーを用いる時の聴取者及び非聴取者の可聴閾値に関する実験を行った。ラウドスピーカーでは避けられない非聴取者に聞こえる騒音を、パラメトリックスピーカーを使用することでどの程度低減できるか、ラウドスピーカーと閾値を比較し明らかにした。結果、パラメトリックスピーカーにより特定の人に情報音を伝えるために必要な音量はラウドスピーカーよりも10dBA以上小さくなることがわかった。本実験は様々な雑音レベルの環境下で計測しており、騒音低下によるサウンドスケープデザインの柔軟性の向上について議論を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、見る人にだけ聞こえる情報音提示サイネージの開発を行い、無響室で音量計測を行うことでオンデマンドかつピンポイントな音提示の性能を評価した。また、30名による参加者実験も実施したことで、提案手法が広告効果向上と空間快適性維持のトレードオフ関係を解消していることを定量的かつ定性的に示すことができた。本成果は既に雑誌論文に掲載されている。 パラメトリックスピーカーを用いた可聴閾値の計測実験は当初の予定には無かったものである。しかし、この実験はデジタルサイネージが設置される商業施設をはじめとした騒がしい環境だけでなく、図書館のような静寂な環境まで、様々な公共空間でのサウンドスケープデザインに影響を及ぼすものであり、これからの研究を行う上でも必要な基礎研究として位置付けている。さらに、この可聴閾値に関する成果は査読付トップカンファレンスにも採択されている。 これらを総合して鑑みるに、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、広告の認知向上及び興味向上のためのシステム提案と効果検証を行う。提案システムは2021年度に提案した見る人にだけ聞こえるシステムを発展させることで、空間快適性も維持する。さらに、雑音レベルに限らず様々な環境においてパラメトリックスピーカーを用いた可聴閾値実験を行う。これによりデジタルサイネージの設置環境に依存しない空間デザインの確立を図る。
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