2021 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖困難な野生由来系統マウスのための個体作製方法の開発
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21J20454
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 奈穂美 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 野生由来系統マウス / 体細胞核移植 / ES細胞 / 資源保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では貴重な野生由来マウス(野生マウス)から核移植ES(ntES)細胞を樹立し、ntES細胞を用いた個体の復元を試みている。 第一に、すでに樹立済みの亜種野生マウスであるM. m. castaneus(CAST/EiおよびCASP1/Nga)由来ntES細胞について品質評価を行った。品質評価には染色体数の計測、未分化マーカー遺伝子の発現解析、テラトーマ形成能試験の3つを行った。染色体数を計測したところ、正常な染色体数を保持した細胞が50%以上を示したラインがほとんどだった。しかし、CAST/Eiの♀の1ラインについては60本以上の染色体が見られた。続いてRNA-seqを用いた未分化マーカー遺伝子の発現を確認したところ、Nanog、Oct4、Sox2の高発現がみられた。以上の2つの品質評価試験において高品質なラインを各系統雌雄1ラインずつ選抜してテラトーマ形成能試験を試みた。その結果、すべてのntES細胞ラインがテラトーマ形成能を保持しており、三胚葉への分化も確認できた。これらの細胞ラインを高品質なntES細胞ラインと判定し、キメラマウス作製実験に用いた。8細胞期胚と胚盤胞期胚への注入法を用いてキメラマウスを作製し、野生色(アグーチ)が混ざった毛色を持つキメラマウスを獲得した。交配試験を行った結果、雄のCAST/Ei由来ntES細胞の1ラインのグループで野生色の産仔を獲得でき、生殖系列への分化が確認された。 第二に、異種野生マウス由来ntES細胞の樹立を試みた。亜種マウスと同様の方法で処理を行うと核移植胚が2細胞期で停止したため、核移植後の活性化処理の際に発生を促進する薬剤を添加して培養を行った。その結果、胚発生の停止が解除され、M. spretus(Mus spretus)の雄から2ラインのntES細胞を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①亜種野生マウス由来ntES細胞からの個体作出、および②異種野生マウス由来ntES細胞の樹立、の2つの目標を設定している。1年目に予定していた計画は全て完了したため、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。 ①については、まず初めに、樹立した亜種野生マウス由来のntES細胞を用いて、高品質な細胞ラインの選抜を行なった。品質評価には染色体数の計測、未分化マーカー遺伝子の発現解析、テラトーマ形成能試験の3手法を用いて行い、最も高品質なラインを雌雄から1ラインずつ選抜した。選抜したラインを用いて注入法によるキメラマウス作製を行い、野生色(アグーチ)の毛色を持ったキメラマウスを作出した。さらにキメラマウスの交配試験を行い、生殖細胞系列に分化可能な1ラインを特定することができた。2年目に計画していたキメラマウス作製にまで取り掛かることができ、順調に進めることができている。 ②については、亜種野生マウスと同様の方法で核移植を行った結果、胚発生が途中で停止した。そこで核移植後の活性化処理方法を変更することで、異種野生マウス由来ntES細胞の樹立に成功した。しかし胚発生停止解除後も発生率が非常に低かったため、現在はRNA-seqを用いて異種間核移植胚の解析に取り掛かっている。当初の計画通りに進み、2年目の計画の準備段階に突入しているため、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、異種野生マウス由来ntES細胞の安定的な樹立を目標に、①異種野生マウス由来核移植胚の発生効率改善、および②異種野生マウス由来ntES細胞の品質評価とキメラマウス作製の2点を目的とする。 ①については異種間の核移植胚のRNA-seq解析により、異種野生マウス由来核移植胚の発生停止の原因となり得る遺伝子を探索する。胚発生停止に関与する遺伝子を絞り込んだ後、核移植胚への人為的導入により胚発生率の改善を試みる。 ②についてはすでに樹立したntES細胞ラインについて、亜種野生マウスの品質評価と同様の方法により評価・選抜を行う。キメラマウスについても同様の方法で作製を試みるが、実験用マウスとは遺伝的に離れた異種野生マウスにおいてはレシピエント胚との相性が悪く、作製が難しい可能性が高い。そこで、レシピエント胚に最適な系統を選抜し、キメラマウス作製を試みる。
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Research Products
(1 results)