2022 Fiscal Year Annual Research Report
領域気象化学-同位体モデルの開発と都市域の極端降水現象のメカニズム解明
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22J10509
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Research Fellow |
梶川 友貴 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 都市域豪雨 / 雲微物理過程 / エアロゾル-雲相互作用 / 気象化学モデル / 水安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
解析雨量データを用いて都市域豪雨事例を抽出するアルゴリズムを用意し、先行研究において主観的な判断によって抽出されていた都市域豪雨事例を96%の精度で客観的に抽出することを可能とした。この手法で2016年から2020年において抽出した事例を対象に、気象モデルNHMを用いた都市域豪雨再現実験を行った。その結果、エアロゾル-雲相互作用を考慮する上で必要な気象モデルの雲微物理スキームにおいて、雲粒数濃度を過大に評価していることを確認した。この課題は、大気汚染によるエアロゾル数濃度の変動が雲微物理過程を介して地上降水にもたらす影響を評価する本研究課題において、結論に大きく関わる問題であり、現在はその解決に努めている。 一方で、化学モデルにおいても二次生成粒子の過剰生成によるエアロゾル質量濃度の過大評価を確認したが、これについては化学モデルやエミッションインベントリの修正を行うことで、時空間的に現実に即したエアロゾル濃度場を用意することができた。現在は、気象モデルにおける雲水数濃度の過大評価の問題が解決されれば、大気汚染物質が雲微物理過程を介して都市域豪雨事例の盛衰に及ぼす影響を定量的に評価することが出来る。雲水数濃度の過大評価を改善できない場合は、これに起因する不確実性を最終的な定量的評価にも考慮することで本研究課題をまとめることが可能である。また、同位体モデルの定式化までを終えており、令和5年度にこれを実装することで、都市域豪雨における水の起源のトレースを試みる段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は雲微物理スキームにおける雲微物理素過程における課題や、化学輸送モデルにおける二次生成粒子の過剰生成に関する課題に取り組む必要があったため、本年度の計画であったNHM-Chemへの水安定同位体モデルの実装やCCN活性における有機エアロゾルの効果の導入について実施できなかった。そのため、当初の計画からやや遅れていると考える。しかし、水安定同位体モデルについては、定式化およびボックスモデルの実装までは完了した。また、化学輸送モデルにおける二次生成粒子(主に硝酸アンモニウム)の過剰生成についてはエミッションインベントリからの入力量やエアロゾル除去過程の調整によって改善することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、雲微物理スキームにおける雲粒数濃度の過大評価の原因を調査して改善を図る。まず、雲粒数濃度の生成・消費に関わる雲微物理素過程に注目する。雲凝結核が多い場合(雲粒数濃度が高い場合)、乱流による初期微小雲粒の自己併合衝突過程が雲粒数濃度の消費に寄与する可能性が指摘されているため(Benmoshe et al., JGR, 2012)、雲粒に関する雲微物理素過程において乱流衝突カーネルを導入し、その効果を検証する。 また、有機エアロゾルによる界面活性能への影響を考慮したCCN活性について気象化学モデルに実装し、都市域豪雨に対するその寄与について推定することを目標とする。今年度に修正した気象化学モデルNHM-Chemにおいて、有機化合物による表面張力に対する効果(ケルビン効果)について考慮したエアロゾルの吸湿成長およびCCN活性を実装する。このモデルも用いて都市域豪雨事例の再現実験およびエアロゾルの起源やエアロゾル-雲相互作用に関する感度を行い、都市域豪雨の雲水量に対する有機エアロゾルの寄与について推定する。
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Research Products
(2 results)