2022 Fiscal Year Annual Research Report
深部由来岩脈の透輝石メルト包有物を用いた鉱床形成プロセスと探査プローブ開発
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22J10793
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
天谷 宇志 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | メルト包有物 / 透輝石巨晶 / 南部フォッサマグナ地域 / 花崗岩質メルト / 白金族 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本島弧における熱水性金属鉱床の形成に寄与している花崗岩質マグマは、地表付近では熱水によって金属元素などが放出され、その初生的な化学的特徴は明らかになっていない。初生的花崗岩質メルトの化学的特徴を明らかにすることは、金属鉱床の起源の解明や鉱床探査において基礎的な知見をもたらす。 筆者は、南部フォッサマグナ地域の深部由来岩脈中の透輝石の数センチに及ぶ巨大な斑晶(結晶)に含まれるメルト(マグマ)包有物の解析を実施、その中には地下深部で捕獲されたと考えられる花崗岩質のメルト包有物が含まれていた。現在までの研究実績では、メルト包有物として捕獲されていた花崗岩質メルト包有物の鉱物組み合わせを詳細に明らかにし、画像処理を用いて見かけのモード(鉱物の量比)・全岩化学組成を検討した。検討の結果、メルト包有物はダイオライトという岩石の組成に近く、やはり花崗岩質メルトが捕獲されていた。このメルト包有物に含まれていた微細な金属粒子は、地表鉱床に普遍的にみられる銅・鉛・亜鉛系の硫化物あったが、見積もられた含有量は低く、地表に大規模な熱水性金属鉱床が存在しないのと調和的である。 また、メルト包有物中の金属粒子の探索で、当初予期していなかった白金族鉱物が比較的多種類含まれていた。白金族元素は工業的に重要であるが、日本では花崗岩質メルトへ移動し、鉱床を作るような知見は見出されていなかった。今回の白金族元素の発見は、その可能性を新たに見出す基礎的な情報を与える可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究進捗状況は、当初の目的である地下深部で捕獲された花崗岩質メルト包有物の詳細記載とその金属含有量など、初生的な化学的特徴を明らかにする目的の点で、おおむね順調に進展している。金属含有量は、地表の鉱床と比較する上で基本的にデータになるが、地表には小規模な金鉱山が多数分布しているのに対し、現在のところメルト包有物に確認された金粒子は、わずかである。このためさらにメルト包有物の探索を続け、花崗岩質メルト包有物と金粒子との関係性を見出すことができればより高確度に金鉱床の形成メカニズムの解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法として2つの観点から考察、研究の応用を検討している。 1つは、地表の鉱床と比較し、鉱床の形成メカニズムに明らかにするためには、メルト包有物中の金粒子の存在を明らかにし、その濃度を明らかにする必要がある。そのために、さらに探索を続け、金粒子を発見したい。 2つ目は、メルト包有物中に比較的複数発見された白金族粒子について、メルト包有物を用いた鉱床探査プローブとして応用することである。日本における白金族は苦鉄質岩(マントル由来の初生的なSiO2の少ないマグマ)に伴われるケースがほとんどである。しかし、今回の発見は、白金族微粒子が珪長質(SiO2量の多いマグマ)のメルト包有物に伴われており、このことは地表に岩脈や岩体として濃集、移行する可能性を示している。この結果をもとに地表での探索を行い、その結果を加味して、深部由来鉱物中のメルト包有物を用いた鉱床探査プローブの開発の可能性を検討する。
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Research Products
(1 results)