2022 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会への経済効果と利用者ニーズから見るグリーン・ツーリズム
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22J11186
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大學 寛和 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | グリーン・ツーリズム / 農泊 / 農家民宿 / 潜在ニーズ分析 / 経済効果分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「農山漁村地域において,自然,文化,人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」であるグリーン・ツーリズムを対象とした研究である。グリーン・ツーリズムは転換期にあり,農山漁村地域における持続的なビジネスを創出する地域振興策の一環として推進されている(近年では「農泊」と称される)。このグリーン・ツーリズムを地域振興策として推進していく上で「利用者のニーズ」や,「地域社会経済への効果」を評価することは重要である。本研究は複数手法を用いてこれらを解明し,グリーン・ツーリズムを包括的に把握することで,ポスト・コロナ時代のグリーン・ツーリズム経営の在り方や,証拠に基づく政策立案(EBPM)に資する知見を導出するものである。 本年度は,まず,過年度のレビューを拡充し,研究領域の研究動向を確認した。その上で「地域社会経済への効果」として,携帯電話の通信等を用いて割り出した人口統計である,Mobile Positioning Data(MPD)を用い,グリーン・ツーリズムによる経済効果の推定を行った。分析には環境経済系で用いられるトラベルコスト法を利用した。 次に,「利用者ニーズ」の評価として,三大都市圏住民の宿泊施設に対するニーズ調査をオンラインで実施した。評価手法としてBest-Worst Scaling(選択肢の中から最も好ましい選択肢と最も好ましくない選択肢の両方の回答を求める手法)を用いた。調査票は国際比較の実施を念頭に作成したため,2023年度に同様の調査を台湾で実施予定である。現在,先行して日本国内で実施したデータを分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,台湾・国立中興大学での在外研究がCOVID-19の関係で当初の計画から6か月後ろ倒しになったものの,各研究小課題の進捗状況には大きな影響はなかった。まず,Mobile Positioning Dataを用いたグリーン・ツーリズムの経済評価については,全国5か所を対象とし分析を行った。この研究成果は,第11回アジア農業経済学会国際会議にて口頭報告(査読付)し,論文投稿する予定である。次に,グリーン・ツーリズムにおけるニーズ分析として,宿泊施設に対する旅行者選好を明らかにするため,調査票を作成しオンライン調査を実施した。日本で実施した調査結果に関して2023年の5月に実施される国際学会での口頭報告に向けて分析中である。なお,調査票設計時には,国立中興大学のカウンターパートとの協議を行い,日台間の国際比較を可能な形にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
グリーン・ツーリズムによる経済効果分析については,2022年度に学会報告した内容をブラッシュアップした上で,国際誌への論文投稿する予定である。次に,グリーン・ツーリズムにおけるニーズ分析については,先行して国内で実施したオンライン調査の結果を整理し,2023年5月中旬に国際学会で口頭報告する。また,同様の調査を台湾で実施予定であり,これらの成果をまとめて国際比較を実施する。この小課題についても2023年度中に国際誌への論文投稿する予定である。最後に,台湾農村部における小規模宿泊施設へのヒアリング調査を実施予定である。調査項目については台湾・国立中興大学のカウンターパートと検討中であるが,日本との比較研究が可能なフレームワーク構築を前提に課題を遂行している。
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