2023 Fiscal Year Annual Research Report
超広帯域電気光学効果を用いた新規超高速走査型プローブ顕微鏡法の確立
Project/Area Number |
22KJ0409
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 卓人 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 超高速分光 / 原子間力顕微鏡(AFM) / 電気光学(EO)効果 / 集束イオンビーム(FIB) / ダイヤモンド / 窒素-空孔(NV)センター / コヒーレントフォノン / 非線形分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では100 THzを越える極めて広帯域な電場応答特性,および,非線形分極によるフェムト秒(10^-15 s)の高速性を有する電気光学(EO)効果を用いた原子間力顕微鏡(AFM),EO-AFMを開発している. EO-AFMは撓みをピエゾ抵抗センサーによって検出する方式を採用しており,専用のカンチレバーにEO結晶(GaP)製AFM探針を取り付ける必要がある.前年度までに確立した先端半径が1μm未満のピラミッド型探針を取り付けたことで,GaP製AFM探針を用いて空間分解能が1 μmを超えるAFM像の取得に成功した.この手法は集束イオンビーム(FIB)加工が利用できる任意のEO結晶に適用可能であり,波及性のあるAFM探針の作製手法が確立された.また,前年度までに観察に成功しているダイヤモンドのコヒーレントフォノンの物理を追求するために,窒素イオン注入とアニーリングによって表面に窒素-空孔(NV)センターを含むダイヤモンドにおいてコヒーレントフォノンの測定を行った.その結果,NVセンターが低濃度で含まれるダイヤモンドにおいてフォノンが元よりも大きい振幅で発生する現象が観察され,特定の濃度で最大振幅(約10倍)となることが確認された.この現象がNVセンターの非対称な欠陥構造とそれに由来する電気的な極性の発生が起源であると考察され,国内学会にて発表し,更なる物理的考察を加えてNature Communications誌に投稿した(現在査読中).さらに,励起光と検出光が時間的に重なった領域で観察可能なEO信号も振幅が大きくなっており,先行研究で報告されている非線形分極を用いたモデルで解釈可能であった.このように,NVセンターによる非線形分極やEO効果をEO-AFMといった最先端技術に利用する可能性も開拓されつつある.
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