2023 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ強度干渉計による画像合成のためのSIS光子計数型検出器の開発
Project/Area Number |
22KJ0419
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丹羽 綾子 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 光子検出器 / 超伝導ジョセフソン接合 / 極低温回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は南極でのテラヘルツ強度干渉計の試験観測に向け、1.5 THz光子検出器の開発と評価環境の構築を行っている。テラヘルツ強度干渉計はHanbury BrownとTwissらによって実証された強度相関による天体観測技術を画像合成に拡張するもので、まだ高感度高解像度の観測技術が確立されていない1 THz~30 THzの帯域をターゲットとする。テラヘルツ帯域の電磁波は大気中の水蒸気による吸収が大きく、テラヘルツ強度干渉計も将来的には大気圏外からの観測が期待されるが、現在はその試験観測として大気中の水蒸気量が少ない南極での観測を計画している。南極ドームAでは冬季に大気透過率10%程度の大気の窓が1.5 THz帯域に確認されており、我々は1.5 THz光子検出器を利用して電離窒素の輝線をテラヘルツ強度干渉計によって観測し、合成画像をHerschel等既存の撮像データと比較して評価する。当該年度中に開発を行った1.5 THz光子検出器は、テラヘルツ強度干渉計が目標とする1 THz以上の帯域で画像合成ができることを示すための重要な開発要素の一つであるが、先行研究では超伝導エネルギーギャップよりもエネルギーの高い光子に対して高感度検出を行う方法は確立されていない。本研究は1.5 THz光子の高感度検出に向け、当該年度中には低温常伝導抵抗の小さいアルミニウムのグラウンドプレーンを用いた1.5 THz光子検出器の再設計と製作を行い、その評価に向けた極低温回路の開発を行った。極低温回路はまだ高速化には至っていないものの、既存の検出器を用いたリーク電流の測定では、別の測定系を用いた測定と概ね一致する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.5 THz光子検出器は一昨年度中に設計と製作を行ったが、接合部分のフォトマスクのデザインに問題があり、評価に進むことができなかった。よって昨年度中には接合部分のデザインを改良するのと合わせて、ダブルスロットアンテナの細いストリップラインを太くするように設計し直したり、グラウンドプレーンの形状をより狭くしたりなどの工夫を加えてフォトマスクを再度作成した。本年度はこのフォトマスクを使用して改めて1.5 THz光子検出器の製作を行い、一昨年のフォトマスクデザインの問題が解決したことも確認した。検出器の製作にはATCのクリーンルームを使用し、グラウンドプレーンとなるアルミニウムの電子ビーム蒸着(厚さ200 nm)、リフトオフ、SISとなるNb/Al/AlOx/Al/Nb多重層のスパッタリング(120 nm/10 nm/数nm/10 nm/120 nm)、RIE(Reactive Ion Etching)、陽極酸化、絶縁層となるSiO2のスパッタリング(200 nm)、RIE、配線層となるアルミニウムのスパッタリング(800 nm)、RIEという手順で行われた。現時点で考えている検出器の評価の項目としては、SIS素子のリーク電流、レゾナンス周波数、帯域幅、量子効率、応答速度などが挙げられる。最終的な高速読出しで使用するのは極低温で動作可能なトランジスタであるGaAs-JFETとGaAs-HEMTを用いた2段のソースフォロワ回路であるが、評価項目のうち応答速度以外は初段のGaAs-JFETのみで測定が可能である。今年度は初段のJFETのみの回路に、既に特性評価が終わっている500 GHz光子検出器を搭載し、リーク電流の測定によって回路の動作確認を行った。その結果、0.6 mVでのリーク電流は当時の特性評価と概ね一致し、回路の動作に問題がないことが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に製作したGaAs-JFET一段の極低温ソースフォロワ回路による読み出しによって、低速応答でも評価可能な項目である、SIS素子のリーク電流、レゾナンス周波数、帯域幅、応答速度について、当該年度に製作した1.5 THz光子検出器の評価を行う。さらに、GaAs-HEMTを用いたソースフォロワ回路の多段化により回路の高速化を行い、検出器の応答速度を測定する。これらの評価の結果をもとに検出器の再製作と評価を繰り返し、設計値を満たす性能の検出器を製作する。また、1.5 THz光子検出器を用いてテラヘルツ強度干渉計による画像合成の実験室実証を行う。
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Causes of Carryover |
論文の出版費用が25万円ほどかかる予定だったが、当該年度中に出版に至らなかったため。現在査読中のため、次年度中に出版が決定し次第費用を支払う。
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Research Products
(6 results)