2023 Fiscal Year Research-status Report
高校生物における概念理解の個人特性を反映したストーリーの活用に関する実証的研究
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22KJ0423
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
志賀 優 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 高校生物 / 概念理解 / Conceptual Profile / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ストーリーを活用した授業の構成・展開方法に関する教授論的知見と、概念理解の個人特性を扱う科学概念理解研究の理論であるConceptual Profile Theory(CP理論)に関する学習論的知見とを統合した高校生物の指導法の考案を目指すものである。この目的を達成するために、本年度は遺伝分野の中心概念である「遺伝子」の概念に焦点化して、CP理論に関する研究を展開した。 「遺伝子」は多義的な概念であり、子どもは文脈に応じて、「遺伝子」という言葉を自分なりの捉え方で様々に理解している。そこで、CP理論に基づいて文献調査を中心とした検討を進めることにより、「遺伝子」には以下の4つの捉え方があることを明らかにした。すなわち、①世代間の継承という文脈で、形質と直接的に1-1対応する記号として「遺伝子」を捉える考え方、②変異体の出現という文脈で、形質を形成する上で本質的な役割を果たす染色体上の物質として「遺伝子」を捉える考え方、③世代内での「遺伝子」の働きという文脈において、RNAやタンパク質の合成をコードしているDNA断片として「遺伝子」を捉える考え方、④細胞内での「遺伝子」の発現調節という文脈において、多様な因子と相互作用しながら、様々なRNAやタンパク質を合成するDNA断片の複合体として「遺伝子」を捉える考え方、である。 これらの4つの考え方は、すべて高校生物の教科内容として扱われており、いずれの考え方も他の考え方にはない独自の有効性を発揮しうるものである。遺伝分野の授業を展開する教師には、「遺伝子」に関する子どもなりの考え方を尊重しつつ、子どもの捉え方が授業の文脈に適しているものであるかどうか、を常に考慮することが求められる。 上述した本年度の成果は、実証的検討を通じて研究全体の目的達成を図る次年度の研究活動に向け、重要な理論的基盤を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記述した「遺伝子」の4つの捉え方が特定されたことにより、本年度実施予定であった、学習者の生物学概念の理解に関する調査・分析の実施計画の具体化が、概ね達成されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
CP理論に基づき、アンケートや半構造化インタビューを中心とした学習者の認識調査を実施し、その調査から得られた経験的データと、「研究実績の概要」に記述した本年度の成果とを照らし合わせて、「遺伝子」に付与されうる多様な意味を集約した概念理解モデル(CPモデル)を構築する。
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