2022 Fiscal Year Annual Research Report
符号化光学素子の学習ベース最適設計によるタスク特化レンズレスイメージングの実現
Project/Area Number |
22J20288
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
蛭子 綾花 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 奥行き計測 / 偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
カメラの小型化,薄型化を可能とする技術として,光学素子の符号化と計算機による復号により従来のレンズなしに撮像を可能とするレンズレスイメージング技術が注目を集めている.特にカメラの小型化が求められる生体内部計測では,体内の形状計測や病変の検知などの特定のタスクを行うことが多いが,そのような特定のタスクに特化した光学素子の符号化方法は明らかではない.そこで,本研究では,奥行き計測や材質分布の可視化などのタスクに特化したレンズレスイメージング技術の実現を目的とし,タスク特化型光学素子の設計と推定モデルの全体最適化を行う.初年度は基礎技術の確立として奥行き計測に取り組み,次年度以降は生体の材質分布可視化として肌の水分量や皮脂量の可視化に取り組む.それぞれのタスク特化型光学素子を微細加工機器により作製し,レンズレスでタスクの実行が可能かを評価実験で検証する.
本年度は,奥行き計測タスクを達成する撮像システムの構築に注力した.本研究では,奥行きを計測する手法として間接Time-of-Flight(ToF)法を採用し,間接ToF法における位相差の計測を行うためのタスク特化型光学素子として電気的に偏光変調可能な光学フィルタ(以下,偏光変調器)を作製した.そして,この偏光変調器と偏光素子の組み合わせによりMHz帯で切り替わる高速な光シャッターを構築することで,光学的に位相差の計算を可能にする手法を提案した.微細加工装置を用いて作製した偏光変調器の特性を明らかにするための基礎評価として,インピーダンスの周波数特性や駆動周波数による偏光変調度の変化を調べた.基本共振周波数で偏光変調器の駆動が可能であることと,偏光変調による相関演算によって光源の強度変調信号と変調器の駆動信号の位相差が輝度として観測されることを1画素の撮像素子によって確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の計画通り,奥行き計測タスクに特化した光学素子の作製を含めた撮像システムの構築を目標として研究を進めてきた.そして,間接Time-of-Flight(ToF)法における位相差計算を行うためのタスク特化型光学素子として偏光変調器を微細加工装置によって作製し,奥行き計測に向けた撮像システムを構築した.1画素の撮像素子を用いた評価ではあるものの,作製した偏光変調器によって偏光変調が可能であることと,偏光変調による相関演算によって光源の強度変調信号と変調器の駆動信号の位相差が輝度として観測されることを確認できた.よって,当初の目標をおおむね達成している.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は,輝度を計測する一般的な撮像素子を用いた奥行き画像獲得に向けて,変調器の面内における偏光変調の空間分布を明らかにするための評価を行っている.次年度は評価実験を続けて,論文誌への投稿,および,国際会議での発表を行う予定である.また,本研究の目的の中には,レンズレスイメージングの要素も含まれているが,本年度は偏光変調器によるToF方式の奥行き計測という機能の実現にフォーカスして研究を進めてきた.今後の発展として,今回作製した偏光変調器に符号化パターンを成膜する等の工夫を行うことで,素子にレンズの機能を付加し,レンズレスで奥行き計測タスクを実行できるようにする. また,今後の研究では,奥行き計測以外のタスクとして,肌の水分量や皮脂量の可視化を対象としている.本年度の偏光変調器の作製で得られた微細加工技術のノウハウを活かして,新たにそれぞれのタスクに特化した光学素子を作製する予定である.
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