2023 Fiscal Year Research-status Report
新規C型レクチン受容体Clec12bの機能の解明とその治療応用
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22KJ0436
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯島 綾菜 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | C型レクチン受容体 / Clec12b / アトピー性皮膚炎 / 皮膚マスト細胞 / P2RX7 / ATP / 抑制性受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
接触性皮膚炎モデルであるCHSは、原因物質を樹状細胞がT細胞に提示し、再び同抗原が侵入した際の炎症応答によって生じる。FITCの皮膚への塗布は、マスト細胞の活性化を介してCHSを誘導する。CHSにおいてマスト細胞は、TNF-α、IL-1や脂質メディエーターを産生し、樹状細胞の所属リンパ節への遊走を誘導する。野生型及びClec12b欠損マウスに対しFITCを用いてCHSを誘導したところ、Clec12b欠損マウスにおいて耳介の肥厚が亢進した。また、FITC感作後の鼠経リンパ節へ遊走したFITC陽性樹状細胞がClec12b欠損マウスで増加した。CHSでは、感作後に表皮細胞からのダメージ関連分子であるATPの産生が亢進し、ATP受容体P2RXファミリーを介して自然免疫応答が惹起される。そこで、Clec12bを強制発現させた骨髄由来マスト細胞(BMMC)を樹立し、ATPで刺激後、顆粒内酵素β-hexosaminidase(β-hex)の遊離を用いてマスト細胞の脱顆粒応答を解析すると、β-hexの遊離率が有意に低下した。次に、Clec12bがどのATP受容体による活性化シグナルを抑制するか検証したところ、BMMCはP2RXファミリーのうちP2RX7のみ発現し、P2RX7特異的阻害薬によってATP誘導性の脱顆粒応答が完全に阻害されたことから、マスト細胞上のClec12bはP2RX7依存的な活性化を抑制することが示唆された。さらに、Clec12bの抑制分子機構を解明するため、BMMCを過バナジン酸で処理し、抗Clec12b抗体を用いた免疫沈降法とその後の免疫ブロッティングにより、Clec12bに会合する脱リン酸化酵素の同定を試みると、SHP-1が会合した。したがって、活性化したClec12bは、SHP-1と会合することで、マスト細胞におけるP2RX7を介した脱顆粒を抑制することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度までに計画していたすべての実験を行い、仮説に沿った結果を得ることができただけでなく、その研究結果を以って権威ある国際誌The Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に現在投稿中である。さらに、令和6年度に実施を計画していたClec12bリガンドの探索にも着手しており、そのリガンド候補としてヘパリンをすでに同定できている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画を超えて順調に研究が進行したことから、次年度計画予定のClec12bのリガンドの同定を試みた。C型レクチン受容体の多くは、タンパク質を修飾する糖鎖を含めた立体構造を認識する (Nat Immunol Rev 2012;13:817.)。そこで、Clec12b が糖鎖を認識すると仮定し、糖鎖をコーティングしたプレートに、Clec12b-Fcタンパク質を加え、Clec12bが特異的に結合する糖鎖を探索したところ、ヘパリンのみが結合能を示した。次年度以降は、ヘパリンがClec12bを活性化し、マスト細胞を負に制御するか、ヘパリン投与によりCHSが軽快するか、in vitro及びin vivoの実験系を用いて各々検証する。
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