2022 Fiscal Year Annual Research Report
水文観測データ同化を組み合わせた陸域水循環モデルによる流出発生過程の解明
Project/Area Number |
21J01322
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
塩尻 大也 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 特別研究員(PD) (80974097)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | データ同化 / 陸面過程モデル / Perturbed forcing / 土壌水分 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸面過程モデルSiBUCと、データ同化のアルゴリズムの1つである局所アンサンブル変換カルマンフィルタ (Local Ensemble Transform Kalman Filter; LETKF) を結合した、SiBUC-LETKFを構築した。一般に陸面データ同化システム(Land Data Assimilation System; LDAS) において、あまり用いられてこなかったアンサンブルデータ同化手法をSiBUC-LETKFでは用いている。そのためLDASにおける適切なアンサンブルデータ手法について、基礎的な調査が必要となる。調査が必要な事項として、これまで検討されてこなかったPerturbed Forcingでの摂動の大きさが挙げられる。Perturbed Forcingとは、入力気象強制力に摂動を加え、各アンサンブルメンバーにそれぞれ異なる気象強制力を入力する手法であり、LDASでのアンサンブルデータ同化の適切な動作に非常に有効である。 Perturbed Forcingの摂動の大きさの感度を調査するため、SiBUC-LETKFを用いたOSSEによる表層土壌水分量同化実験を行い、入力降水量に与える乱数の分散を変化させた。降水量には平均1の正規乱数をかけ合わせることで摂動を与える。その結果、分散が1程度の乱数を使用する場合によく同化できるという結果が得られた。これは比較的大きな摂動が必要であることを示唆し、同化する変数に多くの場合閾値が存在するLDASにおいて、極端な摂動を与える必要がある状況は望ましくない。そのためRelaxation To Prior Perturbation (RTPP) の併用を検討し、結果Perturbed Forcingの分散をRTPPによって小さくできる可能性があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究中で最も重要な陸面データ同化システムの構築が予定通り完了したため、概ね順調に進展していると言える。また陸面データ同化システムでこれまであまり用いられてこなかったアンサンブルデータ同化を使用し、その適切な運用方法についての基礎的な検討も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、観測システムシミュレーション実験 (OSSE) を行ってきた。これは陸面データ同化システムの適切な運用方法を検討する目的のために、真値・観測データを人工的に作成する手法が適していたためである。今後はOSSEを継続することで、陸面データ同化についての知見の更なる深化を図るとともに、構築が完了した陸面データ同化システムを実際の観測データに使用し、様々な条件・データにおける適切なシステム運用方法についての検討を行ってゆく。
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