2021 Fiscal Year Annual Research Report
植物由来モノテルペノイドインドールアルカロイド類の生合成模擬的な集団的全合成研究
Project/Area Number |
21J20696
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
坂元 寿輝弥 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 天然物化学 / 有機合成 / 医薬品化学 / モノテルペノイドインドールアルカロイド / ストリクトシジン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高等植物より見出されるモノテルペノイドインドールアルカロイド(MTIA)類の生合成を模倣した集団的全合成および医薬品化学への展開を目的としている。本年度は、生合成中間体であるストリクトシジンの誘導体を用いて、多彩な生合成様式をフラスコ内で再現することに注力した。まず、当研究室にて確立したストリクトシジンの合成法をもとに、糖鎖をシリルエーテル架橋に置き換えたストリクトシジンアグリコンシリルエーテルの合成法を確立した。本化合物は、適切な修飾を施したのちにシリル基を除去することで多彩な骨格へと導くことができ、主にヘテロヨヒンビン型、コリナンテイン型、アカゲリン関連およびナウクレアオラル関連アルカロイドといった計13種の天然物の合成に至った。これら天然物の中にはすでに有用な生物活性が報告されているものも含まれているが、今回の合成的供給によって、さらに広範な活性評価が可能となり、現在スクリーニングを展開しているところである。本成果は国際論文にて発表している。また、植物からの新規アルカロイドの探索研究についても併せて行った。民間伝承的に黄疸の治療薬として利用されてきたAdina rubescensを研究対象として単離操作を行い、その幹部よりセコルベニンと命名した新規インドールアルカロイド配糖体の単離に成功した。さらに、独自考察した生合成に基いてストリクトシジン誘導体よりバイオインスパイアード反応を駆使した変換を行うことにより、本天然物の迅速な合成的供給と構造決定を可能とした。本成果についても論文として発表した。今後、さらなる天然物の単離、合成および生物活性スクリーニングを行い、モノテルペノイドインドールアルカロイド類の有用な次世代医薬品としての価値を見出す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでの研究の発展としてストリクトシジンを基盤とする集団的な天然物合成を行い、独自考察した生合成を模倣することで計13種もの天然物を供給することに成功した。天然物の教科書中で広く「重要な生合成中間体」として謳われてきたストリクトシジンだが、その骨格変換を実際にフラスコ内で再現できたことは本研究の発展を大きく後押しすると考えている。さらに、本年度は新規アルカロイドの探索も行い、配糖体型のモノテルペノイドインドールアルカロイドであるセコルベニンを単離することができた。その構造決定は、当初目標として掲げていた「合成先行型のモノトリ」といったアプローチを執ることで迅速に完了し、単離からわずか半年足らずで絶対立体配置を含む構造決定と合成的な供給を行うことができた。以上の結果はいずれも論文、学会にて発表し、本年度の発表論文は2報、学会発表は3件であった。一方で、生合成模倣型の合成をさらなるステージへと展開する上で重要となる第二の中間体ガイソチジンの合成には至っていないため、本天然物の合成が今後の課題となる。以上の理由からおおむね順調に進展しているとさせて頂いた。生合成模倣型の合成をさらなる段階へと踏み出す。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までの研究により、ストリクトシジンから生合成早期に産生されるモノテルペノイドインドールアルカロイド類の集団的合成にはほぼ完了した。次なる課題は、第二の生合成中間体であるガイソチジンから生合成後期に産生される天然物の合成であるが、本課題の遂行にはガイソチジンの全合成が不可欠である。これまでの成果より、その骨格の構築には成功しているため、全合成の達成と量的供給法の確立に尽力すべきである。現在、ストリクトシジンからの合成を検討しているが、さらなる工程数の削減や合成的な取り扱いやすさ、生合成模倣型の変換に柔軟に対応することを視野に入れ、ガイソチジンに代わる新たな合成中間体の設計も検討すべきであると考えている。また、これまでに合成を完了した天然物についてはその価値を見出すことこそ本研究の真の目的であるので、広範な生物活性やさらなる生合成経路の熟考などを行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)