2022 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の肢をモデルに生物の最終的な形を作る細胞動態をライブイメージングで解明する
Project/Area Number |
21J20256
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
平岩 祥太朗 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | ショウジョウバエ / ライブイメージング / 細胞動態 / 細胞外マトリックス / 形態形成 / 付属肢 / 変態 / 昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ショウジョウバエ成虫肢の付節形成過程において、蛹期に見られる「パルテノン神殿」様構造の形成や「中ぐり加工」による上皮細胞層の薄層化、マクロファージ様細胞による上皮細胞のトリミングなどのダイナミックな細胞の挙動をライブ・イメージングを駆使して解析することで、生物が最終的な「形」をつく るメカニズムに迫ることを目的としている。 本年度は、研究計画に従い、蛹期の付節において種々の細胞外マトリックス構成タンパク質レポーターの時空間的な局在解析を実施し、タンパク質ごとの局在の違いや基底膜の構造変化から形の形成メカニズムに関する重要な洞察を得た。また、上皮細胞のモザイク解析から個々の細胞形態とその変化も分析し、上皮細胞がこれまで考えられていたより遥かに複雑な形態に変化するステージがあることを示した。さらに、このような上皮細胞の形態変化を実現するために重要な遺伝子を探索するため細胞骨格関連遺伝子を中心としてRNAiによりスクリーニングを行い、成虫肢において組織の最終的な形に影響を与える遺伝子を絞り込んだ。これらに加え、細胞膜レポーター系統の詳細な観察から、付節内腔に存在するこれまで明確に記述されてこなかった隔壁様構造や神経などの位置関係を明らかにし、組織の基本的な立体構造をより正確に理解できるようになった。 これらの実験と観察から得た知見から、「パルテノン神殿」様構造の形成メカニズムの一端が解明されてきたことに加え、組織の形づくりにおいて力を支配する細胞外マトリックスの重要性が示され、今後の研究計画の指針を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で予定していた実験を概ね実施できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験の経過から、当初の研究計画に含まれていた細胞数の増減実験よりも、細胞外マトリックスに着目した実験の方を優先して行うこととする。細胞外マトリックス構成タンパク質のノックダウンやそれらを分解するタンパク質の強制発現などを通して「パルテノン神殿」様構造の形成と消失における基底膜の役割をより明確にしていきたい。また「パルテノン神殿」様構造をはじめとする付節で見られた細胞動態が他の組織でも見られるか、観察範囲を広げて検証を行う。
|