2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J20283
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 舞佐志 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 高車 / 柔然 / エフタル / 中国北朝 / 内陸アジア史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は感染症流行を受け当初より国内での史資料の収集と史料の精読を進行させる、研究の基礎的作業の年と位置づけていた。この計画に従い様々な地域・言語の史料を集め、それらに対する理解を深めた。そしてこうした作業を通じて進展させた研究を発表することもできた。 本年度に進めた研究は主に2点である。まずエフタルの統治体制に関するものである。当時の国際情勢における高車の位置づけを探究する際に高車とエフタルの関係は無視し得ず、その具体的な関係性を明らかにするため漢籍・バクトリア語文書・ギリシア語文献・シリア語文献を比較検討しエフタルの統治体制について述べた。本研究は5月に行われた内陸アジア出土古文献研究会で報告し、そこで参加者より多くの意見を受けて建設的な議論を行うことができた。当初の研究計画では本年度中に本研究を論文化する予定であったが、このような議論を踏まえた上でさらに研究を深化させるべきであると判断し、本年度の論文化は見送ることとした。 2点目は高車と極めて深く関係する柔然に関する研究である。近年出土した墓誌史料を用いて、6世紀前半における柔然と周辺諸国の関係を究明した。本研究は本来次年度に進行させる計画であったが、中国古代石刻史料研究会において取り組む機会があったこともあり大きく進めることとなった。 このほか9月に開催された魏晋南北朝史研究会大会の国際学術講演会で発表した外国人研究者の原稿翻訳を担当し、国外における研究動向を改めて知る機会とすることができた。また『水経注疏』研究会において訳註と報告を数回に亘り行い、当該研究会における報告担当は次年度も数回続くが、こちらは研究会で現在取り組んでいる箇所の全テキストの訳注が完了した後に出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症流行を考慮した国内における史資料の収集・調査や、研究発表については当初の計画通りに進めることができた。 一方、本年度中の論文投稿については計画とは異なり見送ることとなったが、これには2点の理由がある。1つは内陸アジア出土古文献研究会での議論を踏まえてさらに研究を洗練化させたいと考えたためである。そしてもう1つは当該研究会での研究報告を機に、中央アジア史・西アジア史を専門とする研究者とコンタクトを取ることができるようになったためである。これにより次年度より新たな研究会に参加することとなり、高車とエフタルの関係に関わる研究については当該研究会での成果を反映させるべきであると判断し早急な論文化を避けることとした。論文の投稿ができなかったという点では当初の研究計画よりやや遅れてはいるが、研究発表で予想を超えた多くの参加者と盛んな議論ができたことと、新たな研究会への参加は予想していなかった大きな収穫であり、今後の本研究の深化に寄与しよう。 また柔然に関連する研究については研究会で取り組む機会があったために当初の計画より進行が早まり論文執筆に着手した。このほか魏晋南北朝史研究会大会国際学術講演会で海外の研究者と交流できたことも収穫であった。 上記の通り、本年度は基本的に計画通りに研究を進めることができ、論文投稿の見送りといった一部遅れもあったが、それを補いうる計画以上の研究の進展もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
高車とエフタルの関係に関する研究については、次年度より参加する研究会で得た知見を活かして進展させていく。 柔然に関連する研究については、当初次年度に進める予定の研究課題であったが本年度に大きく進展したため次年度での論文化を計画している。また当該研究の論文化が済み次第、高車と柔然及び中国北朝の関係についてさらに踏み込んだ研究の進行へと移る。 次年度では感染症流行の状況次第では海外での史料や稀覯書の調査を遂行したい。次年度中に史資料を調査できれば、最終年度に計画していた研究課題を前倒しで進めることも可能となりうる。
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Research Products
(1 results)