2021 Fiscal Year Annual Research Report
オーキシン流入担体AUX/LAXの機能構造解析によるオーキシン輸送機構の解明
Project/Area Number |
21J20518
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩野 達也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 植物 / オーキシン / 膜輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
AUX/LAXシンポーターは植物において生育に重要な植物ホルモンであるオーキシンの細胞内への流入に携わる膜輸送体である。オーキシンは生体内で生合成され、極性輸送によって特定の器官ごとに成長促進や屈性などの生理作用を引き起こすだけでなく、化学合成されたものが農薬として利用されている。本研究ではAUX/LAXシンポーターのアポ状態及び輸送基質である天然のオーキシンや農薬との複合体における立体構造を決定することで、植物のオーキシン輸送における輸送体の構造変化や基質認識機構といった詳細な分子基盤の解明を目的としている。 これまでにLCP法によって微結晶が得られていたトマト由来LAX4について、さらなる結晶化条件の最適化を行うことで、X線照射実験に用いるのに十分な大きさと量の結晶を得ることに成功した。この結晶を用いて大型放射光施設SPring-8にてX線照射実験を行ったところ、構造解析に適した回折データを得ることはできなかった。その後もトマト由来LAX4の構造解析を可能とするような結晶は得られなかったため、異なる生物種由来のホモログに関して、発現および精製時の性状が良いものをスクリーニングによって選定した。その結果、トマト由来LAX4の精製法を適用することで、シロイヌナズナ由来AUX1およびダイズ由来LAX9について高純度で精製産物を得られるような系の確立に成功した。これらのタンパク質についてトマト由来LAX4と同様に結晶化条件のスクリーニングを行ったところ、いずれについてもタンパク質結晶を得ることができなかった。現在はX線結晶構造解析ではなくクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析による構造決定を目指して、試料調製条件やグリッド作製条件についての検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究成果としては、当初にX線結晶構造解析によって構造決定を行う予定であったトマト由来LAX4に関する構造解析を試みたものの適したX線回折情報を得ることができず、再びホモログスクリーニングを行った。本研究課題の進捗状況として遅れていると判断した理由としては、一年目中に完了している予定であったトマト由来LAX4の構造決定に成功しなかったからである。またホモログスクリーニングに関しても性状が安定しており結晶化実験に十分な量の精製産物を得ることのできるホモログの選定には成功したものの、それらについても結晶が得られず、結果としてAUX/LAXシンポーターのアポ状態における構造決定には至らなかったためである。このような成果で年度を終えてしまった原因としては、たんぱく質の結晶化実験は1,000通りを超えるバッファー組成の条件から最適なものを決定していく必要があり、最終的に構造解析に適した回折情報を得ることのできないような結晶しか得られなかったにもかかわらず、X線照射実験に持っていくまでに長期間かかってしまったことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
AUX/LAXシンポーターの構造解析について、X線結晶構造解析ではなくクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析による構造決定を試みる。この手法では結晶化に比べて必要なたんぱく質量は少なく、またバッファー条件についても結晶化ほど限定的なものではなくなるため、実現可能性は十分にあるといえる。一方でクリアするべき課題として、AUX/LAXシンポーターのアミノ酸配列から予測される立体構造において、特徴的な膜外ドメインが存在しないことが挙げられる。一般的に膜たんぱく質の単粒子解析については、界面活性剤のミセルに覆われる膜貫通ドメインに加えて特徴量を持つ膜外ドメインを有しているほど、粒子像のアラインメントが成功しやすくより高分解能での構造決定に至りやすいという傾向がある。そのためAUX/LAXシンポーターについても、膜外に特徴量を付加することによって構造解析に有利になるようにする必要性が高いと考えられる。具体的な解決策として、近年同様に膜外ドメインに乏しい膜たんぱく質について、構造認識抗体を結合させることで膜外の特徴量を増やし構造解析に成功している例が多くみられている。またタグとなる配列を付加するという方法も考えられる。上記のような方法をとることによって、AUX/LAXシンポーターの構造決定を目指す。 またアポ状態と並行して、輸送基質となるインドール-3-酢酸 (IAA) や 1-ナフタレン酢酸 (1-NAA)との複合体についても同様に構造解析を行う。決定した両構造の比較から、基質認識や輸送に重要な箇所を同定する。
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