2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J20547
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
隈部 壮 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 分割統治法 / リプシッツ連続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、離散境界構造に関する研究を行っており、その一環としてリプシッツ連続なアルゴリズムという概念を提案した。リプシッツ連続性とは、アルゴリズムのロバストネスを示す指標であり、小さな変化が入力されたときにアルゴリズムの出力がどの程度変化するかを示すものである。 リプシッツ連続なアルゴリズムを構築するためには、しばしば分割統治法を用いるのが有用である。ここに分割統治法とは、大きな問題を小さな問題に分割し、それぞれを解決することで全体の問題を解決する方法である。この手法を用いることで、離散境界構造に着目し、特に最短路問題と呼ばれるグラフ上の問題に対し、リプシッツ連続なアルゴリズムを開発することができる。 リプシッツ連続性は、アルゴリズムのロバストネスを示す指標であり、再現性や敵対的攻撃への頑強性を保証するものである。具体的には、リプシッツ連続なアルゴリズムは、入力データのわずかな変化にも敏感に反応することがなく、安定した出力を保証することができる。その性質が、再現性の担保や敵対的攻撃への頑強性へとつながっており、その根本には離散境界構造の存在があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、今年度の目標である分割統治法の広がりを探究することについては、既に多くの成果が出ている。分割統治法を活用したアルゴリズムの開発に成功し、離散境界構造の探究を通じて高速なアルゴリズムと、それに対する各種パラメータの正確な解析を得ることができた。 また、昨年度に扱ったアルゴリズムの感度をさらに発展させ、リプシッツ定数という情報理論的パラメータを提案した。このバウンドに対して、分割統治法が効いてくることを確認することも目標の一つだったが、この点においても確かな成果を得た。分割統治法を用いたアルゴリズムと離散境界構造に基づくその解析手法により、リプシッツ連続性によるアルゴリズムを得ることができた。 さらに、再現性や敵対的攻撃への対策などの多くの応用的課題に対し、リプシッツ連続性がその答えとなりうることを発見し、理論的な解析を行っている。 以上のように、当研究は計画通りに進んでいる。分割統治法の広がりを探究し、リプシッツ連続なアルゴリズムの提案や再現性や敵対的攻撃への対策についても多くの成果を得ている。これらの成果は、グラフアルゴリズムやそのロバストネスなどの応用分野で有用なものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、今まで扱わなかったグラフ理論的な問題に特に取り組む予定である。具体的には、境界に隠れている離散的な構造を明らかにし、リプシッツ連続なアルゴリズムを提案することを目指す。また、他のパラメータとリプシッツ連続性との関係を調査する。
境界に隠れている離散的な構造を明らかにするためには、境界構造の解析手法の開発が必要である。来年度は、境界構造を解析するための新しい手法の開発に取り組む。
国内外での発表を通じ、本研究への着目度が高まってきていることを感じている。そのため今年度は、外部の研究者との交流や共同研究を推進し、より広い分野との関わり合いを調査することを考えている。
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Research Products
(6 results)