2023 Fiscal Year Annual Research Report
拡張されたコネクショニスト認識論を応用した素朴心理学の認知哲学的分析
Project/Area Number |
22KJ0589
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 諒祐 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 他者理解 / 社会的認知 / 素朴心理学 / 認知科学の哲学 / 心の哲学 / コネクショニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では主に以下の課題に取り組み、一定の成果を得た。 ①コネクショニズム的な理論観の検討。ポール・M・チャーチランドのコネクショニズム的な科学理論の見方を検討し、その限界を示した。具体的には、チャーチランドのモデルでは理論を構成するプロトタイプないしは概念のもつ意味についてうまくとらえられないという問題を指摘した。これらの検討は、科学理論のみならず心と行動についての素朴な理論(素朴心理学)のあり方を捉えるという課題にも応用可能である。 ②理論説のバリエーションの検討。理論説は他者理解には素朴心理学が用いられるという立場だが、その内実については様々な議論がある。それらのバリエーション、特に素朴心理学はモデルのあつまりであるという立場について整理した。様々なタイプの理論説が措定する素朴心理学のあり方について整理することで、各々の利点や問題点が明確になった。 ③他者理解の知覚的・相互行為的側面の理論説による説明。われわれの日常的な他者理解は知覚的で相互行為指向的な側面をもつため、推論的で客観的な理論的プロセスとしては描くことができないという問題が理論説に対して投げかけられてきた。こうした問題に対して、理論説の支持者の議論や理論説と整合的に理解可能な議論を踏まえ、理論説の描像のもとで知覚的で相互行為的な他者理解を説明するモデルを提示することを試みた。 以上の成果によって、素朴心理学のあり方について、また、その解明におけるコネクショニストモデルの有効性についてよりよい理解が得られた。さらに、これらの成果は期間内に検討できなかった課題にも活用できると思われる。今後の研究によりわれわれのもつ心と行動についての常識的知識の本性についてのさらなる解明が見込まれる。
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