2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J20827
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 直旺 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 地下深部 / 低酸素 / 微生物 / メタプロテオーム解析 / 遺伝暗号 / 変則遺伝暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低酸素極限環境に生息する地下微生物に着目し、遺伝暗号が大気酸素濃度変動の影響を受けて変化した可能性を検討する。地下微生物の一部は、通常の標準遺伝暗号とは異なる変則遺伝暗号を用いて翻訳を行っている可能性があるため、各地下微生物が用いている遺伝暗号をそれぞれ推定する。 地下微生物の遺伝暗号の推定のためには、地下微生物を対象としたメタプロテオーム解析のデータが非常に重要である。そこで本年度は、より精度・クオリティの高い新しいメタゲノムデータを用いて、以前のメタプロテオーム解析の生データの再解析を行った。その結果、より多くのペプチドおよびタンパク質のアミノ酸配列を決定することに成功し、以前は同定できなかった微生物種のデータも新たに追加できた。これにより、地下微生物の遺伝暗号を推定するためのより信頼性の高いメタプロテオームデータを得られた。また、今回再解析に用いたソフトウェアでは、de novo解析も可能であり、発現ペプチドのアミノ酸配列とメタゲノムデータから導かれるタンパク質のアミノ酸配列とを直接比較して、変則遺伝暗号を探索できるようになった。さらに、以前には汚染による混入だと考えられた興味深い微生物種も、現場での代謝を確認でき、地下深部生態系の中で重要な役割を果たしていることが示唆された。地下微生物の遺伝暗号の推定に関しては、昨年度に検討した複数のアプローチの解析を発展させ、標準遺伝暗号からのずれを統計的に検出する手法を開発した。また、コドンの使用頻度の解析、ハウスキーピング遺伝子におけるアミノ酸配列長の比較などの解析も新たに加えた。今後は、これら複数のアプローチによる推測結果を統合的に解釈し、地下微生物の遺伝暗号の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
より精度・クオリティの高いメタゲノムデータを用いた、メタプロテオーム解析の生データの再解析により、地下微生物の遺伝暗号の推定に必要不可欠である発現ペプチドおよびタンパク質について信頼性の高いデータを得られた。また、変則遺伝暗号の推定に関しても、再解析によるde novoデータを用いた解析やその他の新しい解析を新たに加えたことで、研究目的達成のための進捗は得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、再解析で得られたデータを用いて、昨年度や本年度に検討した複数アプローチの解析を推し進め、推測結果を統合的に解釈して、地下微生物それぞれの遺伝暗号の推定を目指す。具体的にはまず、de novo解析で得られた発現ペプチドのアミノ酸配列を、地下微生物のメタゲノムデータにlocal blast解析によりマッピングし、変則遺伝暗号を探索する。またコドンの使用頻度については、終止コドンが変則遺伝暗号に変わりやすいため、終止コドンの使用頻度に特に着目する。またセンスコドンでも、極端に使用頻度が高い/低い場合は、変則遺伝暗号に変化している可能性がある。また、ハウスキーピング遺伝子におけるアミノ酸配列長の比較については、終止コドンがセンスコドンに変化している場合には、見かけ上のアミノ酸配列長は短くなると考えられる。
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