2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0592
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 直旺 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 地下深部 / 低酸素 / 微生物 / メタプロテオーム解析 / 遺伝暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低酸素極限環境に生息する地下微生物に着目し、遺伝暗号が大気酸素濃度変動の影響を受けて変化した可能性を検討することを目的とした。地下微生物の一部が、通常の標準遺伝暗号とは異なる変則遺伝暗号を用いて翻訳を行っている可能性を探るため、各地下微生物が用いている遺伝暗号をそれぞれ推定した。 昨年度までに、陸上地下深部花崗岩の地下微生物を対象にメタプロテオーム解析を行い、環境中で実際に発現しているタンパク質の情報から、地下微生物の実際の代謝機能を明らかにした。また、メタゲノム解析から明らかになったゲノム情報や、メタプロテオーム解析で得られたタンパク質情報を用いて、地下微生物の遺伝暗号を推定するための複数の解析を開発および検討し、それらの結果を統合的に解釈することで、変則遺伝暗号の探索を試みた。 本年度は、昨年度得た新しいデータを用いて、全遺伝子において各コドンがどのアミノ酸を指定するかを計算する解析を新たに行い、地下微生物それぞれの遺伝暗号を推定した。その結果、地下微生物の多くは標準遺伝暗号を用いて翻訳している可能性が高いことがわかったが、一部の地下微生物で、標準遺伝暗号から逸脱している「コドン-アミノ酸」の組み合わせが示唆された。そこでさらに、コドン使用頻度、ゲノムGC含量、変則コドンに対応したtRNA遺伝子の有無などを解析した結果、各コドンのアミノ酸指定は標準遺伝暗号に従っている可能性が高いことが明らかになった。すなわち、本研究で解析した地下微生物はいずれも標準遺伝暗号を用いて翻訳を行っている可能性が高く、地下微生物が地下で生息するようになる前にすでに標準遺伝暗号が成立していたことが示唆される。
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