2023 Fiscal Year Annual Research Report
ハビタブル天体探査による前生物的分子の起源解明に向けたレーザー同位体分光法の開発
Project/Area Number |
22KJ0603
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯本 航生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | レーザー誘起プラズマ分光法 / 惑星探査 / 月探査 / 元素分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究(Yumoto et al., 2023)から、レーザープラズマ分光法を用いて真空中で正確に水素量を定量するには、主要元素量(Si,・Fe・Mgなど)も同時に定量し、岩石種を同定することが有効だと分かった。そのため、初年度に製作した装置を用いて、月隕石を含む175個の岩石・レゴリス試料の元素分析を行い、主要元素の定量性能を明らかにした。また、表面の物理状態(粒径やバルク密度)によって発光輝線の強度が数倍変わることもYumoto et al.(2023)で明らかになったため、粒径・密度が異なる試料も網羅的に測定し、実際の惑星表面に存在しうる様々な状態の試料を正確に分析できる汎化性能の高いデータ校正手法を開発した。部分最小二乗回帰を用いた本校正手法を適用することで、高イルメナイト土壌・純斜長岩・(ノーライト質な組成を持つ)衝突溶融岩の同定など、将来の月探査の主要目標に資する分析が可能であることを示し、レーザープラズマ分光法が月探査にも有効であることを明らかにした。これらの成果をSpectrochimica Acta Part B誌に投稿した。 本研究期間全体を通じて開発した一連の分析装置とその校正手法は、様々な化学組成・物理状態を持つ惑星表面物質に対して、真空環境下でも精密な前生物的物質の元素分析を可能にするものである。これまでも米国主導の火星探査によってレーザープラズマ分光法は強力な元素分析手法であることが示されてきた。これに対し、本研究で開発した新たな装置・手法によって、プラズマ発光強度が何桁も小さくなる大気がない惑星であっても、火星環境と同等あるいはそれよりも良い精度での元素分析が可能になった。更に、真空中での計測に必要な装置の性能値(分光器の波長分解能や口径の大きさなど)も明らかになったため、探査機搭載品の製作という次のステップに進むことが可能になった。
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