2022 Fiscal Year Annual Research Report
過去最高の時間・エネルギー分解能X線観測によるX線連星系からの質量放出現象の研究
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21J20947
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富永 愛侑 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | X線連星 / 中性子星 / 円盤風 / 降着円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は今年度、CirX-1 が近年、軌道周期に沿った周期的な光度変動を繰り返していることに注目し、軌道周期内の描像を明らかにすることを目標とした。これには、大きな有効面積を持つ NICER 装置による観測が最適である。短い観測時間で多くのスナップショットを取得できるからである。我々は軌道周期を 100 分 割し、合計50ksec の観測結果を得た。光度変動では、近星点直前(軌道フェーズ 0.8-1.0(=0))での急減光と、近星点通過後(フェーズ 0-0.2)の急増光という特徴が見られた。光度変動に順次て1周期を三つのパターンに分割し、降着円盤からの放射が見えている「安定期」、視線上に密度の大きな吸収体が存在して見かけの光度が暗くなり、さらに光電離プラズマからの輝線が見えている「dip期」、近星点通過後に激しく光度が変動しつつ、光電離プラズマにより吸収線が観測される「flare期」を定義した。全期間を通して、降着円盤の一部が吸収体によって隠されていると仮定することでスペクトルの全景を説明することができた。線スペクトルはこの降着円盤がプラズマを光電離するとして自己矛盾せず、先行研究でもよく観測されていたFe 高階電離線だけではなく、Mg, Si, Sなどの線スペクトルの解析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初は得られるはずであったXRISM/Resolveによる観測データだが、打ち上げ延期のため、解析も遅れることが予想される。今年度中にデータが得られなかった場合は、そのほかの衛星によるアーカイブデータを用いて研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
NICERによる観測データの光電離プラズマについての解析は、現在までは速度場や物質分布を考慮せず、1次元のみでの簡単なシミュレーションと対照している。今年度は、Cloudyというシミュレーションツールを用いて、これらの未検討事項を加味したシミュレーションを行う。まずはNICERで観測した当時のX線光度を仮定し、モデルの作成に取り組む。これだ達成されたのち、光度や降着円盤の傾き等を変え、過去の明るい時に観測されたP Cygni profileなど、過去に得られた特徴的なスペクトルの再現を目指す。一つのモデルに対し、いくつかのパラメータを変更することで、長期間の複雑な変動を解釈することが目標である。
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