2021 Fiscal Year Annual Research Report
名もなき芸術家の遺産:フランス革命期におけるルクーの越境的な身体/建築表象
Project/Area Number |
21J21413
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊澤 拓人 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | ジャン=ジャック・ルクー / 18世紀末 / 建築 / 絵画 / カリカチュア / フランス革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀末から19世紀前半を生きた芸術家ジャン=ジャック・ルクーについて、建築画や肖像画など多ジャンルにわたるルクーの作品を、綿密な資料調査をもとに多面的な分析を行うことが目的である。 以下、研究実施計画に沿って項目別に実績の概要を述べる。 (1)ルクー『市民建築』の建築画に見られる地下空間の表象、あるいは肖像画に見られる両性具有的な主題の分析:比較対象として同時代のアブジェクション表象の事例(サド、レチフ、カリカチュア等)を調査した。『市民建築』の図版に関しては、更なる綿密な調査が必要であり、現地調査が望まれる。他に、ルクー『新しい方法』に書かれた顔のデッサン理論を分析し、ラファーターを中心とした当時の観相学の知見からの影響を見出した。今後は、同時期の「顔」の表象について分析対象を広げていく。 (2)必要な資料の購入:上記各作品の分析の方法論を整えるため、西洋美術史および文化史関連の書籍を購入し調査した。他に美術批評・理論関連の書籍を参照した。関連図書に関してオンラインで研究会を開催した。 (3)フランスにおける資料調査:フランス国立図書館やカルナヴァレ美術館を訪問しルクー作品や同時代の図像を調査する予定だったが、新型コロナウィルスの影響を受け当年度は中止することとなった。 (4)電子資料を研究に用いる体制の整備:タブレット端末やPC周辺機器を購入し、夏までに完了した。ただ、インターネット接続に関して問題が発生したことを鑑み、次年度も引き続き環境の整備を続ける必要がある。 (5)修士論文をもとにした論文執筆:執筆に遅れが生じており、本年度中の発表を目指すこととなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス流行の影響を受け、フランスでの図版の調査を中止せざるを得なかった。それにより当初予定していたルクー作品の分析が不十分なものにとどまった。ただ、フランス国立図書館の公開する電子資料からルクーのほとんどの作品を参照することは可能であり、環境整備を進めたこともあって研究に進展はあった。よって「(3)やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の実績を踏まえ、以下のように研究を推進する予定である。 (1)フランスでの図版調査:初年度に新型コロナウイルスの影響により中止した現地調査を、状況が許す限り本年度は実施する予定である。それにより、ルクー作品やその他の図版のより細かな分析が可能となる。 (2)「顔」の表象研究:初年度においてルクーのデッサン理論を観相学の理論と比較し新たな知見を得た。本年度は、ルクーを足掛かりとして同時期の「顔」の表象についてさらに分析対象を広げていく。具体的には、まずラファーターを中心とした18世紀後半の観相学理論を調査し整理する。さらにそこから影響を受けた芸術家として特にテオドア・ジェリコーを取り上げ、彼の《モノマニ》連作における「顔」の表象を分析する。 (3)研究成果の発表:初年度に完遂できなかった、修士論文をもとにしたルクー論の執筆を進める。さらに(2)で述べた「顔」の表象分析についても、得られた知見を論文として発表することを予定している。
|