2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J21569
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 諒太 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 歌舞伎 / 国文学 / 江戸 / 談義本 / 所作事 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度に行った研究は以下の3点である。 まず本研究の主要なテーマである江戸歌舞伎の狂言作者に関する研究について、桜田治助、中村重助、瀬川如皐関係の台帳や正本を中心とする資料収集と、その調査結果を踏まえた上演年表の作成を行った。収集した資料の内、『高尾大明神楓玉籬』(天明八年七月、江戸中村座上演)や『会稽櫓錦木』(寛政八年十一月、江戸中村座上演)などの未翻刻台帳に関しては翻字と注釈作業を行った。 2点目に、宝暦期前後の歌舞伎と談義本に関する研究を行った。宝暦期から明和期の談義本にみられる歌舞伎芝居に関する言説を分析し、それらに共通するテーマが読み取れることと、そうした言説が役者評判記や劇評とも異なる視点からその時々の歌舞伎上演史の実態を正確に捉えていることを確かめた。その成果に基づき、令和3年8月に開催された演劇研究会例会において、「談義本における芝居論」と題して口頭発表を行った。 3点目に、浄瑠璃所作事に関する研究を行った。狂言作者の作劇活動に関する研究の一環として、所作事(舞踊)としてつくられた常磐津節等の音曲正本とその詞章に焦点を当て、音曲の題材が歌舞伎の世界として確立していく過程などについて調査を行った。特に常磐津「花吹雪富士菅笠」(宝暦八年三月、江戸市村座上演)について、特定の登場人物の造型に着目して関連作品の系譜を整理・分析することで、本曲が「富士浅間」という「世界」の形成に大きな役割を果たしたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、令和3年度は本研究に関わる資料収集や上演年表の整備が研究実施計画の中心であった。「研究実績の概要」に記した通り、本年度ではそれらに加えて複数の資料の注釈作業や、研究課題の口頭発表と論文執筆を行ったことから、予定以上に研究を進展させることができたと言える。しかし一方で、これらの成果を本研究の主目的である狂言作者の作劇法や職掌の解明につなげられておらず、この点に関して令和4年度では一層の進展を目指すことが課題となる。以上から総合的に判断して、上記の区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は令和3年度に収集し翻字を行った芝居台帳の注釈を進めることで、狂言作者の作劇法や職掌についての研究をおこなってゆく。作劇法については同じ趣向・場面を持つ異なる作者の台帳や音曲正本、せりふ正本などを比較することで検討し、狂言作者の職掌については、引き続き資料収集を進めながら主に桜田治助と中村重助を中心に検討する予定である。 また、それらに関連して、狂言作者と大通との関わり合いや、俳諧を通した狂言作者の交友関係など、様々なアプローチから狂言作者の実像を明らかにすることを試みる。
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