2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J21670
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳瀬 大輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | メルロ=ポンティ / フランス現代哲学 / 現象学 / カント / デカルト / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
①研究実施計画に従い、メルロ=ポンティの晩年の主著『見えるものと見えないもの』において、議論の出発点として設定された「知覚的信憑」という概念を検討した。その結果、明らかになったのは、知覚的信憑という概念が、『見えるものと見えないもの』における1.伝統的哲学の解体、2.表現論、3.存在論という3つの主要な議論の出発点となっているということである。報告者は、この研究成果を日本メルロ=ポンティ・サークル研究大会(2021年9月19日、オンライン開催)にて発表した。その後、発表原稿に加筆・修正を施したものを、『論集』40号(東京大学哲学研究室発行)に投稿し、受理された。 ②当初予定していたハイデガーと後期メルロ=ポンティの関係性の検討に取り組んだものの、扱わなければならない文献が膨大であったため、同研究の成果を発表することを次年度以降に繰り下げた。しかしながら、その過程で見出された前批判期カントの小論「負量の概念を哲学に導入する試み」に関するメルロ=ポンティの言及の意義と、そこから反照的に示されるメルロ=ポンティの存在論の新たな側面を明らかにする研究をおこない、その成果を論文「「存在のゼロ」-後期メルロ=ポンティにおける否定的なもののカント的意味-」にまとめ、『フランス哲学・思想研究』(日仏哲学会発行)に投稿し、受理された。 全体として、メルロ=ポンティ自身のテクストの内在的解釈と、それへの外的影響という両側面から、晩年のメルロ=ポンティについての包括的な研究をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた『見えるものと見えないもの』における端緒的な記述の検討については、ほぼ完了することができたたた め。また、メルロ=ポンティとハイデガーの関係についての研究は、学会発表や論文という仕方で形にすることはまだできていないが、研究自体は進んでおり、その代わりに、カントとの関係についての論文を発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り、『見えるものと見えないもの』後半部分の「作業ノート」についての研究をおこなう予定である。その際、フッサールの草稿「コペルニクス説の転覆」からの影響に着目し、メルロ=ポンティがいかにしてカント以来の超越論的哲学を克服しようとしていたのかを明らかにする予定である。また、昨年度に計画しながらも完成させることのできなかったハイデガーとメルロ=ポンティの関係についても、今年度中にまとめ、発表することを予定している。最後に、予算の関係上、当初計画していたパリでの未刊草稿の検討は困難であるため、次年度に繰り越すこととする。
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