2021 Fiscal Year Annual Research Report
高精度診断を可能とする新規高集積型SPECTプローブ群の開発
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21J21745
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 篤生 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 核医学イメージング / 放射性医薬品 / 代謝酵素 / 細胞内滞留性 / 腹膜播種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん特異的に活性が亢進している代謝酵素を標的として、その酵素活性を捉えることで深部がん病変を検出可能な核医学プローブの開発を目的としている。小分子化合物をベースとした核医学プローブの開発を目指し、その「がん組織からのウォッシュアウトが速くシグナル強度が稼げない」という弱点を解決するために、標的酵素との反応により高反応性の中間体を生成し、それらが細胞内のタンパク質などと反応してトラップされることで、がん細胞において高い細胞内滞留性を獲得するような分子設計を行った。ガンマ線放出核種であるヨウ素-125で標識したプローブの合成を達成し、さらに酵素反応実験によって、合成したプローブが標的酵素によって代謝されて目的の中間体を生成していることを確認した。 本プローブを培養細胞に対して投与したところ、標的酵素の活性に応じて、細胞内へのプローブの取り込みおよび細胞内での滞留が起こっていることがわかり、本分子設計が細胞に対しても機能することが確かめられたので、担癌モデルマウスを用いたSPECTイメージングへと進んだ。 標的酵素活性が高い、または低い細胞を皮下に移植した皮下腫瘍モデルマウスを作製し、その腫瘍内にプローブを直接注入したところ、標的酵素活性の高い腫瘍においてシグナルがより長く残存することわかり、ある程度局所的な環境においては、本プローブの細胞内滞留性獲得メカニズムが機能することがわかった。 本結果を受け、微小な播種病巣を持つ腹膜播種モデルマウスに対して本プローブを腹腔内投与したところ、反応したプローブは良く腫瘍に集積する一方で、未反応プローブは速やかに腹腔内から排泄され、微小な病変を高いコントラストで描出することができた。本プローブの腹腔内投与は、腹膜播種の位置情報を伴った精確な診断法として臨床的に応用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、SPECTプローブの効率的な合成法の確立および、細胞を用いた滞留性の評価を達成することを主な目的としていたが、これらを比較的スムーズにクリアすることができ、担癌モデルマウスを用いたin vivoイメージングを着実に進めることができた。その結果、腹膜播種モデルマウスに対して開発したプローブを腹腔内投与する実験において、興味深い結果を得ることができ、翌年度以降はプローブの体内動態の改良や、本イメージング剤での知見を活用したがん治療薬の開発などへと研究を発展させることができると期待している。よってこのような自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
担癌モデルマウスを用いたSPECTイメージングで得られた結果から、その血中滞留性の低さゆえに、本プローブは静脈内投与による全身性投与には向かないことが明らかになっている。このような体内動態における課題を解決するために、プローブの構造にアルブミンバインダーを組み込むことを考案し、そのようなプローブの合成および評価を行っていきたいと考えている。 また、ヨウ素-125で標識したプローブでは、甲状腺や胃への非特異的な集積が無視できず、臨床応用においてはこのような非特異的な集積を低減することが望まれる。その解決策として、より安定な化学結合を形成できるフッ素-18でプローブを標識することを考えており、こちらはPET核種でもあるため、より鮮明な画像が得られるという点でも魅力的である。 さらに、これまでにヨウ素-125標識で得られている結果は、アルファ線を放出する治療用核種であるアスタチン-211にも応用可能であることが見込まれ、診断薬と治療薬の組み合わせによるセラノスティクスの実現可能性の検討も行いたいと考えている。
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Remarks |
本研究成果を2022年1月、国立がん研究センター若手研究セミナーにて口頭発表。
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