2021 Fiscal Year Annual Research Report
反芻家畜の視索前野キスペプチンニューロンに作用する新奇排卵制御因子の探索
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21J22456
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 雪奈 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 反芻家畜 / 排卵障害 / 視床下部-下垂体-性腺軸 / キスペプチンニューロン / 黄体形成ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシやヤギなどの反芻家畜の雌において、視床下部に存在する視索前野キスペプチンニューロンが排卵中枢制御の要であると考えられている。視索前野キスペプチンニューロンは性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンへの作用を介して下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)サージを引き起こすことで、排卵を誘起する。排卵が上手く起こらない病態である排卵障害は反芻家畜の繁殖を妨げる大きな要因であり、排卵中枢制御メカニズムの解明が喫緊の課題である。本研究は、反芻家畜の繁殖効率向上に向けた新たな基礎的知見を得ることを目的とし、視索前野キスペプチンニューロンへの作用を介してLHサージに影響する新奇因子の特定を目指している。 2021年度は、本研究内ですでに同定した排卵中枢制御に関わる可能性のある新奇候補因子ペプチドAについて、その繁殖中枢における作用をより詳細に明らかにした。ラットへのペプチドAの脳室内投与実験を行い、血中LH濃度の測定によってLHの分泌動態への影響を解析した。その結果、卵胞発育に必須であるLHのパルス状分泌をペプチドAが抑制することを明らかにした。また、ラット脳におけるペプチドAの受容体の局在解析によってペプチドAが作用する可能性のある領域を明らかにするとともに、ペプチドAの脳室内投与後のラット脳における神経活性マーカーcFosの免疫染色によって、ペプチドAが活性化する神経経路の特定を進めた。さらに、キスぺプチン遺伝子の発現に作用する因子のスクリーニングを可能にするため、本研究において樹立した視索前野キスぺプチンニューロン細胞株「GP64」において、CRISPR-Cas9システムによるキスぺプチン遺伝子座への緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は移動制限等の影響もあり、共同研究機関である名古屋大学附属農場で実験をすることが叶わず、生体ヤギを用いた実験を進められなかった。しかしながらラットを用いた実験により、ペプチドAのLH分泌への作用やその作用経路について多くの知見を得ることができたため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きペプチドAの脳への作用機序の特定を目指すとともに、ペプチドAのLHサージへの影響についてより詳細な解析を進める。また、ラットだけでなく反芻家畜であるヤギを用いてペプチドAの機能解析を行い、より実践的なデータの取得を試みる。視索前野キスぺプチンニューロン細胞株「GP64」を用いた実験については、GFP遺伝子の導入以外の方策も視野に入れながらスクリーニングアッセイ系の樹立を進める。
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