2021 Fiscal Year Annual Research Report
脳磁図による多感覚刺激応答の評価およびブレインコンピュターインターフェースの開発
Project/Area Number |
21J22469
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 史奈 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 脳磁図 / 脳波 / Brain-Computer Interface / 視聴覚 / 拡張現実 / 逆問題推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多感覚刺激に対するミリ秒単位での脳活動の評価と、それを基にした多感覚Brain-computer interface (BCI) の開発に取り組んでいる。ミリ秒単位での脳活動の評価については、境界を有した活動領域を脳磁図から推定する逆問題解法に制約条件を追加することで推定精度の向上を目指した。本研究では被験者本人の頭部解剖画像から聴覚野の位置を特定し、活動源の中心位置を聴覚野に限定して大域的最適解を探索するよう改良した。聴覚刺激が提示された際に聴覚野で生じるN100mの振幅がピークとなる時刻とその前後について、活動領域を推定したところ、活動領域の面積と総電流量に時間変化が見られた。 多感覚Brain-computer interfaceについては、拡張現実感提示技術(Augmented reality: AR)と透過型ヘッドマウントディスプレイを用いた車椅子操作用BCIの開発に取り組んだ。先行研究では、一度の脳波計測で任意の位置へ移動できないという問題があった。本研究では一度の計測で任意の位置へ移動、または任意の方向へ回転が可能なシステムの構築を目的とし、ヘッドマウントディスプレイを用いて現実空間の情報を反映した視聴覚刺激を提示した。視野内の選択肢として、ユーザの前方の拡張現実空間上に仮想マーカを表示し、視野外の選択肢として、ヘッドマウントディスプレイのスピーカと空間音響技術を用いてユーザの周囲に仮想音源を配置した。被験者は、前方への移動を選択する場合には移動先の仮想マーカが発光する回数を数え、回転を選択する場合には回転方向の角度に対応する仮想音源から音が提示される回数を数えた。被験者が注目した選択肢をシステムが脳波から正しく推定できた精度はチャンスレベルを上回ったが、実用性の向上のためには刺激提示方法の改良が必要であり、今後も引き続き検討をしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、多感覚刺激に対するミリ秒単位での脳活動を評価し、多感覚Brain-computer interface (BCI) を開発することである。 ミリ秒単位での脳活動を評価するため、脳磁図から境界を持つように活動領域を推定する手法である脳磁場逆問題解法を拡張した。脳磁場逆問題解法は、視覚刺激に対する応答について活動領域を推定する手法であった。本研究では、被験者本人の頭部の解剖画像から聴覚野の位置を特定し、活動領域の中心を聴覚野に限定して大域的最適解を探索するように拡張することで、聴覚刺激に対する応答に脳磁場逆問題解法を適用し、推定精度の向上を目指した。聴覚刺激提示後に聴覚野で発生する反応について、反応のピーク時刻および前後で推定したところ、活動領域の面積と総電流に変化が見られた。視覚刺激のみならず聴覚刺激に対する応答の評価が可能となったため、脳磁場逆問題解法を多感覚刺激に対する応答に適用することで、本研究の目的の1つである多感覚刺激に対するミリ秒単位での脳活動を評価できると考えられる。 多感覚Brain-computer interface (BCI)については、拡張現実感提示技術(Augmented reality: AR)のゴーグルを用いた車椅子BCIの開発に取り組んだ。実用性の向上のためには刺激提示方法の改良が必要であるが、そのための基礎となる結果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、脳における多感覚刺激に対する応答を評価することで、多感覚刺激の適切な刺激提示方法を検討する。また、多感覚刺激BCIについては、ユーザが注目した選択肢をシステムが脳波から識別できる精度を改善することに取り組む。 多感覚刺激については、これまでの成果や心理学的手法を用いた実験を行った先行研究から、脳で視覚刺激の情報を優先的に処理している可能性が示されている。しかし、BCIにおける適切な多感覚刺激の提示方法は十分に検討されていない。ヒトは脳で多感覚刺激の情報をミリ秒単位で統合するが、その過程の応答については、いつ・どこが・どのように活動するかが明らかではないため、多感覚刺激に対する応答を評価するためには脳全体の神経活動を計測する必要がある。そのために、頭部の周囲に高密度にセンサを配置可能であり、ミリ秒単位の時間分解能を持つ脳磁図を用いて計測する。実験では、実生活に即したBCIで提示することを想定した視聴覚刺激を用いて、刺激に対する脳の応答を計測し、視覚的および聴覚的な選択肢の数、提示する音の種類や方向を検証する。解析では、脳磁図データを用いて、刺激に対する反応の強度や時空間的な広がりを評価し、BCIにおける適切な刺激提示方法を検証する。また、得られた脳磁図データをもとに刺激の情報を脳で統合する過程の反応についても考察する。 多感覚BCIについては、昨年度にARのヘッドマウントディスプレイを用いた車椅子操作BCIの開発に取り組んだが、実用性を改善するためにはユーザが注目した選択肢をシステムが脳波から識別できる精度を向上させる必要があった。本年度は、脳磁図の計測で得られた結果をもとに視聴覚刺激を提示し、識別精度の向上を目指す。
|