2022 Fiscal Year Annual Research Report
1960-70年代の中国とソ連の対日原油輸出を巡る対立―国際要因と国内要因―
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21J22500
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 雄大 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 中ソ対立 / 資源外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本国際政治学会において、「佐藤栄作政権の対ソ外交――1972年グロムイコ訪日への対応から」と題して学会発表を行った。本研究は、米中接近直後のソ連外務大臣グロムイコの訪日を取り上げて、そこでの日本側の対応を外務省と総理官邸双方の視座から検討した。米中ソ関係において孤立に直面したソ連は、対日関係の改善を図った。外務省は、ソ連の足元を見て北方領土問題で強気に主張すべきであり、経済協力というエサに釣られてはならないと考えていた。一方で、総理官邸のブレーンはむしろ北方領土問題に固執すべきでなく、シベリア開発協力などの経済関係の深化を含めた雰囲気の改善をまず進めるべきだと考えていた。その結果、福田赳夫外務大臣がソ連側へ北方領土問題を執拗に提起する一方で、佐藤栄作外務大臣は同問題への言及を避けるという状況が生じていた。これは、総理が任期内に成果を上げる必要がある一方で、外務省は継続性のある機関であり功を焦る必要がないという特徴を反映していると考えられる。このように外務省と総理官邸の対ソ外交方針には違いがみられるが、その差異はこれまでの言及での指摘とは真逆のものであり、そこに研究上の意義が見いだせよう。 ただし、本研究発表段階では未確認の史料が存在しており、それをすでに入手している。そこで、その史料を利用してさらに加筆修正することで、本年度には学会誌への投稿を目指したい。 その他、1970年代における中ソによる対日原油輸出政策についても、論文集内の一篇として、今年度中の刊行を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も引き続きコロナのために、国内外での史料調査が充分に行えるような状況ではなかった。とりわけ国外での史料調査は実質的に不可能であり、2月にやっと台湾での史料調査を実施することができた。その際、国史館や中央研究院近代史研究所での史料調査を中心に進めたが、政治大学の党史館文書の調査を殆ど行うことができなかった。2023年度も、中国や台湾での史料調査を可能であれば実施する。 また、日本国内での史料調査も制限が大きかった。とりわけ、外務省外交史料館は月に一度程度しか利用することができなかった。2023年度にはこれが緩和される予定であり、さらなる集中的な調査を進めたい。 このような困難の中で、日本国際政治学会で研究報告を行い、一定の成果を公表できたことは幸いであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、史料調査がさらに容易になることが予想される。そこで、既に遅れている部分である史料調査をさらに実施したい。日本国内での史料調査は、今後コロナ以前と遜色ない状況にまで戻るだろう。そこで、特に外務省外交史料館を中心に、集中的な調査を進めたい。中国国内での史料調査は現在もめどがつかない状況にあるが、もしこれが可能であれば、渡航して調査を行う。あるいは、状況が改善されなければ、台湾での史料調査を行う。 また、研究成果の取り纏めに入りたい。日本国際政治学会で発表した内容を再構成したうえで、学会誌への投稿を目指す。また、論文集形式での論文の公刊を目指す。
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