2021 Fiscal Year Annual Research Report
物質の非平衡応答による電子の電気双極子能率の精密測定の理論
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21J22745
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 廣伊智 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 電子EDM / CP対称性の破れ / 有限波数 / 誘電率 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、電子の永久電気双極子能率(eEDM)の値を有限波数の電場に対する磁化の応答と誘電率の測定という2種類の物質測定だけで決定できるeEDM探索手法を提案した。しかし、原子核を自由度として考慮していなかったため理論を適用できる対象物質が金属や半導体に限られていた。そこで、今年度の研究では電子と原子核をいずれも位置と運動量をもつ自由度として計算を進め、理論の拡張を目指した。そして、その計算の過程で以下のことが新しく分かった。これまでの研究では外部電場を印加したときの磁化の応答を調べる必要があると考えられていた。しかし、外部電場を印加していなくても、物質が自発的に有限波数の電荷密度の秩序を持つならば同波数の磁化も生じることが分かった。このようにして生じた自発磁化を測定することを通じたeEDM測定について研究を進めている。 また、これまでの研究では、Schiff遮蔽が起こるような非相対論的な固体電子系において、eEDMの一次の応答が生じる例として、有限波数の磁化の応答に着目していた。そこで今年度の研究では磁化とは異なる物理量の応答に着目し、磁場中の固体子系における電気双極子モーメントや電流の応答について新たに計算した。その結果、これらの物理量がeEDMの一次の応答を示すための条件を求めることができた。今後は、その応答を利用したeEDM探索手法についても研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質測定を利用した電子の電気双極子モーメント探索手法について、これまでの研究を一般化することに成功し、新たな測定方法の確立にも目処が立っている。そのため、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
物質が自発的に有限波数の電荷密度の秩序を持つならば同波数の磁化も生じることが分かったので、このようにして生じた自発磁化を測定することを通じたeEDM測定についてさらに研究を進める。 また、磁化とは異なる物理量がeEDMの一次の応答を示すための条件を求めることができたので、今後は、その応答を利用したeEDM探索手法についても研究を進める。
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