Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 当初の目的, 計画を大きく上回る成果を出すことができた. 本研究課題の目的は, 対合がある3, 4次元多様体上で, 対合の情報がねじれた作用として方程式に持ち上がっている場合に, この作用の情報を加味したSeiberg--Witten理論を(特に, 対合に固定点がある場合に)構築し低次元トポロジーへの応用を出すことであった. 特に, フレアホモトピー型を構成し応用を出すことに注目した研究計画であった. 実際のところこのフレアホモトピー型不変量は初年度にほぼ構成できた上に, 当初念頭にあった結び目理論への応用も今野北斗氏および谷口正樹氏との共同研究においてなされた. その後, 対合の方程式へのねじれた持ち上げを見るSeiberg--Witten理論を用いて, 4次元多様体に埋め込まれた部分曲面への不変量を筆者が構成した. この不変量が微分構造の情報をどれだけ持っているかはアプリオリにはわからなかった. しかしその後, 昨年11月に, 実射影平面の4次元球面の埋め込みの可算無限族であって, 互いに連続的にアイソトピックだが滑らかにはアイソトピックでない例を発見することができた. このような曲面の埋め込み同士をエキゾチック曲面と呼ぶが, 4次元多様体のエキゾチック曲面の研究は豊富にあるにも関わらず, 最も基本的と思われる4次元球面の中の閉曲面によるエキゾチック曲面の例は少ない. 現在でも向き付け可能なものは見つかっておらず, 本研究以前には向き付け不可能な曲面で種数が6以上のものしか見つかっていなかった. 困難の所在は, 既存のゲージ理論では種数が小さい場合にエキゾチック性を検出できる不変量が構成できなかったことによる. したがって, この成果は実Seiberg--Witten理論ならではの成果であり, 本研究課題の締めくくりにふさわしいものである.
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